「グラスアート」世界展を目指す 芸術家・秋山実さん
バラや魚など精密画を駆使した「グラスアート」をご存じだろうか。透明のグラスを使ったアートで、芸術家の秋山実さんが手がけるものだ。透明グラスに描く作品はすべて1点モノだけに、相当な手間と技術がいる。このような作品は日本では初めてであり、外国にもないという。5月に「あべのハルカス」で「グラスアートの世界」展を開催してから、さらに注目を浴びている。いったい、どのようなものなのか。そこで、奈良県の学園前にあるアトリエを訪ねて話を聞いてみた。
世界でも類をみない独自のアート
「アートというものに何でも興味があったので、油絵、水彩と、何でもやってきた。自分しかできない物を求め、ついにガラスをやり始めた。一色で描くような人は日本にもいると思うが、精密に描くのは私くらいでしょう。しかも、表裏両面を描きます」。開口一番、秋山さんはこう語った。 グラスの表面に薔薇の絵などを描くのは誰でも思いつく。だが、透明グラスだと、裏側には絵の模様が入っていないので、何とも中途半端だ。 秋山さんは、まず裏面の模様を先に描き、その上に表面の絵を重ねて描く。そうすることで、表裏一体となった素晴らしいものが完成する。つまり、グラスなので内側から描くことができない分、表側に裏の絵と表の絵の2種類を描くことになるわけだ。 これは世界でも類をみない独自のアートだという。
原点は「人と同じことをしていたのではおもしろくない」
「最初は(グラスの)表面だけに描いていた。すると、透明のグラスなんかだと、裏側がのっぺりしているので、これはプロじゃないと思った。要は裏側の絵を先に描き、それから表側の絵を描くんです。やり出したら、朝8時から夜の11時まで、ぶっ通しで描き、それを3週間続けて、ようやく1点ができる」 それくらい根気のいる作業だと、秋山さんは話す。したがって油絵や水彩画は、今や息抜きになっているとか。このグラスアートの完成品は70点ほどある。1点50万円など高額な値段ながら、展示会でこれまで20点ほどが売れたという。 「人と同じことをしていたのではおもしろくない」というのが創作の原点。秋山さんは繊維商社のデザイン課に勤務し、もともとデザインの仕事をやっていた。その後、独立して1977年に大阪心斎橋にアトリエを設立すると、電通と業務提携してキャラクターの制作も多数手掛けた。また、NTTテレホンカードのデザインでは50点以上も版権契約をしている。キャラクター展やNTTテレホンカード原画展なども開いた。 そしてアトリエを奈良に移してからは、作家活動に専念して創作に取り組んでいる。2012年7月、奈良市美術館にて「秋山実アートの世界」個展を開催。同年11月には、日本グラスアート協会会長に就任し、指導にもあたっている。グラスアートは、ステンドグラスと似ているが、より簡単にできる新しいクラフト。ガラス板などに鉛でできたリード線と特殊なカラーフィルムを貼って制作するものだ。