ポケカ「リザードン」落札額4500万円 米競売会社が、日本市場を狙い撃ちしたワケ
「大谷翔平グッズ」が注目 ヘリテージに追い風のワケ
――日本に事務所をオープンした狙いは何ですか。 マッダレーナ: アジアでは香港にオフィスがありますが、次のアジアの拠点をどこにするかを考えていたところ、アニメーションやビデオゲームの創出が盛んな日本には多くの貴重なアイテムが存在していて、海外のコレクターから高い評価を受けていました。わが社としては収集品市場の開拓の余地があると見込んで、東京オフィスをオープンしました。現在、東京のオフィスではアニメやゲームの出品数が増えていて、今後の日本人出品者と落札者の増加を期待しています。 ――ヘリテージの強みは何ですか。 マッダレーナ: サザビーズやクリスティーズはこれまで美術工芸品を中心にオークションを展開してきましたが、値が上がり過ぎて売り上げが伸び悩んでいます。その中でわれわれは、ポップカルチャーアイテムのコレクションに卓越性があり、例えば日本独自の「ポケモン」グッズやアニメの原画を通してオークション市場に新たな刺激を与えることを目指しています。最近では、競合もこうしたグッズに関心を示しており、彼らがわれわれの得意なアイテムに入ってきています。 ――ドジャースの大谷選手の活躍に伴い「大谷グッズ」も注目されていますが、スポーツ関連のアイテムは取り扱っていますか。 マッダレーナ: わが社は有名選手のスポーツグッズを得意としていて、トップレベルの実績があります。NBAのマイケル・ジョーダン選手が1992年に着用していたユニフォーム、大リーグのジャッキー・ロビンソン選手のバットなど多くのグッズを出品してきました。大谷選手がメジャー通算で松井秀喜選手を抜いて日本人として最多となる176本目のホームランを打ったボールを今年8月に出品しました。同月には大リーグのベーブ・ルースが1932年に着用していたユニフォームも出品され、35億円で落札されました。 ――偽物が出品されないためにどのような対策をしていますか。 マッダレーナ: 出品する前に、米国にあるトレーディングカードなどの真贋鑑定をしているPSAやCGCといった鑑定専門の会社に鑑定を依頼して、本物だという証明書をもらってから出品しています。 ――出品に当たり、生成AIなどテクノロジーを活用していますか。 マッダレーナ: 膨大な数の出品数のカタログを作る際に活用しています。出品の写真が出ると、その品物の説明文が生成AIによって自動的に表示されるなど、テクノロジーには投資をしています。 ――今後、どこに注力して売り上げを伸ばそうと考えていますか。また、サザビーズとクリスティーズにはどのように対抗しようとしていますか。 マッダレーナ: この半年は順調に伸びています。今後は売り上げを伸ばすために、各アイテムの専門家を雇用したいと思います。この業界は専門家を養成するために時間もかかるので、段階を追ってわが社が得意とする分野を核にして、日本を含む世界のオークション市場で売上高を伸ばしたいと思います。サザビーズとクリスティーズは美術工芸品などそれぞれ特徴のある分野を持っているので、競合はしていません。お互いに特徴を生かしながら成長していきたいと考えています。また特定のコレクターだけを対象にするのでなく、より多くの出品者に出品してもらいたいと思っています。 ――日本市場は今後、どこまで成長するとみていますか。 松本: コレクションのマーケットが世界的に成長しているのは実感しています。最近は日本のアイテムに対するコレクターの人気、熱量が高まってきています。世界的に人気の高いアニメやゲームは元をたどれば日本で最初に発売されたことが分かり、日本のものがオークションとして注目を集めています。ビデオゲームは1本で2億円するものも出てきており、まだ成長の伸びしろが大きいと思います。 ――オークション会社に入る手数料はどれくらいですか。 松本: おおよそ落札価格の2割が手数料としてオークション会社に入ります。ヘリテージの手数料は他社と比べて割安になっています。 ――日本人がヘリテージを選ぶ理由は何でしょうか。 松本: 売る場合に、当社に出品すると海外の収集品市場にアクセスできるのが大きなメリットだと思います。最近は日本人コレクターも高齢になり、収集品を手離す方も多くなっていますが、その際に大きなコレクションを扱えて、コレクションが本当に好きな方に売りたいというのでヘリテージを選ぶ方が多くなっています。