理解しがたい「他人の行動」心読める行動パターン。人間関係を築く指針となる「愛着行動システム」
ハザンとシェイバーの研究では、調査対象の成人の約4分の1がこの愛着スタイルだった。 3つ目のカテゴリーは、上記2つのカテゴリーの混合型とみなすことができる(「無秩序型」と呼ぶ研究者がいるのはこれが理由だ)。 この不安・回避型の愛着スタイルの人は相矛盾する反応を示すことがあり、親密になることを強く望みながらも、親密な結びつきへの抵抗も示す。私が以前見かけた若い女性は、前に「YES!」、後ろに「NO!」とプリントされたTシャツを着ていた。不安・回避型はちょっとそんな感じだ。
■気力が弱っているときに、決まって取るスタイル 全体として見れば、ほとんどの人はここまでに説明した行動様式のうち複数が混じって表れる傾向があるが、たいていは、気力が弱っているときや不安におそわれたときに決まって取るスタイルがある。 自分の愛着スタイルを知るとともに、人間の神経系は第一に危険から身を守るように進化してきたことを理解することは、自分や他者の行動を理解する助けになる。 また、とくにその行動が理屈に合わない、あるいは場違いだと見える場合は、人間を突き動かす基本的な欲求を理解するのにも役立つ。愛着スタイルは心理学の世界ではよく知られているが、社会全体では広く議論されていないようだ。
私はコーチングをするときによく愛着スタイルの話を持ち出すが、だいたいクライアントから珍しいものを見るような目を向けられる。けれども、愛着スタイルの枠組みはとても役に立つツールになる。話を聞けば誰でも、もっと早く知っていればよかったと思うはずだ。 ■愛着スタイルは人間関係の地図になる グーグルマップなどの地図アプリが私たちの移動のしかたを完全に変えたのと同じように、愛着スタイルを理解すれば、とくに人間関係という、ときにややこしい領域に関しては、そこに対処する方法もすっかり変わるだろう。
愛着理論について詳しく掘り下げていくと本書にはとても収まりきらないが、もっと詳しく知りたいという読者の方は、ここに書いたことを取っかかりとして参考にしてほしい。愛着スタイルについて詳しく学んでみれば、人としての成長に役立つツールがもう一つ手に入るのは間違いない。
エミリア・エリサベト・ラハティ :応用心理学研究者