ドレイクの次は誰だ?「全員クソ食らえだ!」ケンドリック・ラマーの新譜をSGDが解説!
もう一つ隠された意味として、HIPHOP業界の状況を時代別に説明している要素もある。1つ目のギタリストはお金とセックスを求め過ぎて、音楽に対する愛を失った状態で亡くなってしまったという内容だが、90年代後半から2000年代前半にかけて、HIPHOPで売れる曲が主にお金とセックスを全面的にラップしたものだったことを意識している。 前述のビリー・ホリデイは、筋金入りの薬物中毒者だったことで知られているが、2010年頃から現在にいたるまでHIPHOPで売れる曲の内容は薬物摂取や性的な描写を美化する内容が多いのである。 つまり、ケンドリックは多くの人に良い内容の曲を意識させ、HIPHOP業界の罪を浄化するためにこの世に生まれ変わったことを示している。ひいては自身がHIPHOPの救世主であることまで訴えている濃厚なリリックなのである。 こんな感じで「GNX」はミックステープ全体を通してHIPHOPを良くしようとする意識を元に、それ以外にもさまざまな意味を言葉遊びと比喩表現で隠しながら示す素晴らしい作品なのだ。
本命のアルバムはいつ出るのか?
ここもあくまでも予想というのが大前提だが、ケンドリックはまだ本命のアルバムを出す予定だという説が噂されており、リリースの時期についてはさまざまな意見が分かれている。 まずは私の予想だが、12月25日(水)のクリスマスの日にリリースすると思っている。これは細かいヒントが多数あるが、大きく分けて2つの理由がある。
1つ目はケンドリックが今年、アメリカにとって重要な祝日などに取った行動に基づいている。 今年を代表するヒット曲「Not Like Us」を最後の5曲連続で披露する異例のコンサートを、黒人にとって重要な奴隷解放を祝う6月19日の祝日に合わせて開催したこと。 さらに、その「Not Like Us」のMVを7月4日の独立記念日に合わせて公開したように、ケンドリックはアメリカにとって重要な日に合わせて大きな動きを見せて来たのである。 信仰深いケンドリックがクリスマスというイエス・キリストの誕生を祝う日に本命のアルバムをリリースするのは非常に辻褄が合うのだ。 2つ目は、「GNX」の2曲目である「squabble up」のMVの最後に「コンプトン・クリスマス・パレード」の垂れ幕を壁にかけていること。このMVは隠されたメッセージに溢れた映像に仕上がっているが、そのほとんどが自身の地元に対する愛が見え隠れするものばかりだ。 その中で最後にわざわざクリスマスと書かれた垂れ幕を出してきたのは偶然ではない。常に考え抜かれた行動を取るケンドリックなので何も意味がないとは考えにくい。 次にネットで見かけた納得のいく、考え抜かれた説を紹介しよう。 冒頭でも書いたとおり、このミックステープのタイトルはビュイックのグランドナショナルというシリーズをアップグレードしたGNXのことを指している。当時のビュイックは複雑な工程で製造されていたため、アップグレードの日にちを限定し、新聞紙などで告知する必要があり、その日が12月12日~14日の3日間だった。そんな短い期間内で一度しかアップグレードできなかったから世界に500台ほどしかないのかもしれない。 さらにアップグレードには2660ドルの費用が掛かっていたが、実は今回のミックステープの長さが総合でちょうど2660秒なのである。