ドレイクの次は誰だ?「全員クソ食らえだ!」ケンドリック・ラマーの新譜をSGDが解説!
もちろん本気ですべてのラッパーと身体的に喧嘩をしたいわけではなく、あくまでも比喩表現であり、「みんなラップのスキルを磨いて競い合おう!」と、暗にスキルを磨くことを促しているのである。 実際、続く2曲目の「squabble up」というタイトルはスラングで「喧嘩する準備をしろ!」という意味であり、内容も上記と同じような感じで比喩的にアーティストに競う意識を持たせた内容である。 3曲目の「luther」ではSZA(シザ)という有名なR&Bシンガーを客演に迎え入れ、一聴するとラブソングのように聞こえるメロウな曲とリリックである。だが、これはHIPHOPに対するケンドリックの愛をラップしており、内容も愛するHIPHOPを救おうとしている意思が表れている。
隠された意味が深い6曲目
6曲目には特に濃厚な内容である「reincarnated」があり、直訳すると「生まれ変わった」という意味だが、HIPHOPファンなら聴けば誰でも感じららるほど、今は亡き偉大なラッパー、2PACのフロウ(歌い方)を完璧にコピーしている。 ビートにも1996年にリリースの2PACの曲「Made Niggaz」をほぼそのまま使ったサンプリングが入っており、90年代にHIPHOP業界を良い意味で騒がしてた2PACの「生まれ変わり」であることを示すだけでなく、それ以外にもさまざまな意味を含めている。 この曲は基本的に3つのパートに分かれており、1つ目は1940、50年代に活躍した有名なギタリスト、ジョン・リー・フッカーの目線でラップ、2つ目は1960年代に活躍した女性シンガー、ビリー・ホリデイの目線でラップ、3つ目はケンドリック自身が父親と会話をしている様を描いたパートに分かれている。 最初の2つのパートはケンドリックの前世であり、タイトルのニュアンスにある「輪廻転生」的な思想を元に、自身が前世でやってきた「罪」を最後のパートで父親にアドバイスと許しを求めるという構成だ。 父親とは設定だけであり、「神様」との対話というスピリチュアルな観点も取り入れ、キリスト教的に救世主であるイエス・キリストが神の子である部分と、自身をHIPHOPの神の子であるところとで結びつけている。 さらに、悪魔になってしまった堕天使ルシファーのこともしっかり意識していて、前世で行ってきたケンドリックの罪は悪魔の影響であることも表すというスピリチュアル的にも物すごく深いリリックだ。