【徹底解説】ビットコインETF 需要の背景、現物の重要性、米国と他国比較、市場はどう受け入れた?、今誰が取引してる?、今後は?
・なぜ「先物」でなく「現物」が必要だったのか
ビットコインもイーサリアムも、先物ETFは既に存在しますが、償還(ETFを返還して原資産を受け取ること)を行うことができない先物ETFは、原資産の価格と乖離した値動きをしてしまうことがありました(これを「トラッキングエラー(が大きくなる)」と表現します)。 具体的な事例として、Grayscale社による最大規模のビットコインETF「GBTC」が挙げられます。GBTCは、もともと先物ETFとして市場で流通していましたが、今回のSECによる承認を経て先物ETFから現物ETFに転換しました。現物転換前のGBTCは、ビットコインの償還を行うことができず、ETF市場における需給によって価格が決まる状況でした。 この図は、GBTCのBTC価格に対するプレミアム・ディスカウントの推移です。最大で140%のプレミアム、最低で48.32%のディスカウントで売買されていることがわかります。これほどまでに原資産価格から乖離した値動きをする商品に対して、いかにETFである(規制当局の監視を受けて運用される)といえども、伝統的金融の投資家が参加するのは無理があったと言わざるを得ません。 チャートはETFが承認された1月10日(日本時間11日)までとなっていますが、ETF承認期待が高まるにつれ、転換後に償還が可能になることが意識され、ディスカウントが徐々に解消されていく様子が観察されます。 先物ではなく現物ETFが承認されたことで、米国のETF投資家が真の意味で(現物と乖離することのない)暗号資産へのエクスポージャーを獲得した、というのが、今回の承認の重要性なのです。
・米国ETFと他国のETFの比較
カナダやドイツなど、既に現物ビットコインETFが上場されている国々が存在するのに、なぜこれほどまでに米国の現物ETFが注目されるのでしょうか。米国のETFが他国のETFと比べて特別視される理由は、市場規模に占める米国の存在感の大きさによるものです。 こちらの図はヨーロッパ最大級のデジタル資産管理会社CoinSharesが公開した2023年の年次報告書における、各ETF / 暗号資産 / 国の内訳です。 現物ETFが承認される直前の状態で、米国は既に先物ETF市場において圧倒的な存在感を示していたことが伺えます。 現物ETF承認後のデータとして、BitcoinTreasuries.NETが公開しているデータの最終値を参考にすると、今回追加されたビットコイン現物ETFが保有するビットコインの枚数がビットコインの最終(最大)枚数に占めている割合(全ビットコイン市場における現時点での影響力)や、ETF市場という観点での国別のビットコインのシェアを推し量ることができます(集計対象のETFが若干異なる点や、ドル建ての残高ではなくビットコインの枚数を見ている点には注意してください)。
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