中田ボタンさんが公表「ステージ4の肺がん」 詳しい症状や治療法、生存率を医師が解説
肺がんステージ4の余命・生存率
2015年に肺がんのステージ4と診断された方のデータでは、3年生存率、5年生存率は非小細胞肺がんでそれぞれ17.8%、9.0%、小細胞肺がんで4.8%、2.2%とされています。 ステージ3での5生存率は非小細胞肺がんで31.1%、小細胞肺がんで17.4%ですから、ステージ3と4では生存率に差があることがわかります。 ただし、このデータの集計より後に分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬を用いる治療法の進歩が続いているため、2024年時点で診断を受けた患者さんでは、もう少し良いデータとなる可能性があります。 しかし、ステージ4の肺がんが完治することは残念ながらまずありません。いずれ病気に伴って体力が低下し寿命を迎える、という大きな流れを意識しながら、ご年齢や体力に合った最適な治療を医療スタッフと模索していくことが重要です。 なお上記の生存率はあくまで全体の患者さんのデータをまとめた数字であり、年齢や背景の体力、間質性肺炎など併存疾患の有無、がん細胞の特定の遺伝子の変化の有無、薬物の治療効果、副作用の出方などによって、一人一人の患者さんの予後にはかなりの幅があります。 特定の方の正確な余命を推測することは困難ですが、私の場合、ご本人のご希望があれば「体力が落ちてしたいことができなくなるであろう時期」や「おおまかに予測される余命」はお伝えし、その後の生活設計に活かしていただいています(現代の医療ではご本人中心の医療という原則やコミュニケーションエラーを防ぐ観点から、見立てをご家族のみにお伝えすることはしないのが一般的です)。
肺がんステージ4の検査法
肺がんの可能性を調べるためには、以下に説明する検査が代表的なものになります。これらの検査は主に総合病院の呼吸器内科や呼吸器外科、腫瘍内科で行われます。 主に「肺がんの広がり具合をみる」ための画像検査と、「肺がんの確定診断やがん組織のタイプを見る」ための組織を採取する生検、がん組織の性状や遺伝子を確認する検査に分かれます。 さまざまな検査が必要であることから、治療開始までには1か月程度かかることもしばしばです。治療が始まるまでヤキモキすると思いますが、治療法の検討に必要な事前の検査はしっかり受けましょう。 「画像検査1 CT検査」 肺がんの原発巣やその大きさ、周囲の組織への広がり、リンパ節や他の臓器への転移の有無を推定します。また背景の間質性肺炎の有無も見ることができます。CTは通院で行われることが一般的です。 「画像検査2 FDG-PET検査」 細胞が活発に働いている場所や炎症が起きている場所などを見ることができます。肺がんでは、主に転移があるかどうかを調べる目的で行われます。CTでは見つからなくてもFDG-PETでは転移があると判明することがあります。 通常は通院で行われ、FDGという物質を含んだ注射を打って約2時間後に撮影が行われます。検査のために半日はかかると思っておいたほうが良いでしょう。 「画像検査3 MRI検査」 FDG-PETでは脳転移を確認するのは難しいですが、MRIでは見ることができます。また背骨などの骨転移がどのような状況かを調べるときにも用いられます。 通常、通院で行い15分から30分程度、グワングワンと大きな音が鳴る機械の中に入って検査を受けます。閉所恐怖症がある方はあらかじめ担当医に伝えましょう。 「生検1 気管支鏡検査」 のどの麻酔や点滴による鎮痛剤・鎮静剤を使用した上で行われます。口から鉛筆かそれより少し太いファイバーを入れ、肺の中でファイバーの先端から器具を出し、腫瘍の一部を採取したり気管支の壁越しに腫れたリンパ節を針で刺してリンパ節の一部を採取したりします。 ご状態により通院と入院どちらで受けるのがよいか変わりますので担当医とご相談ください。腫瘍ができている場所やその状態によっては1回の検査で十分量の組織が得られないことがあり、その際は後日の再検査や別の方法での生検を考慮します。 「生検 2 CTガイド下生検」 CTを撮影して腫瘍の位置を把握しながら、体に針を刺して、肺の腫瘍や骨転移部の組織を採取します。通常、部分麻酔で行います。生検時に器具の音が大きくパチンと鳴りますが驚いて動かないようにしてください。 「病理検査」 上記の生検で肺がんの組織が十分量得られたら、顕微鏡で組織のタイプを見ます。非小細胞肺がんでは、がんに対する免疫状態の指標となるPD-L1の発現度を調べたり、がん細胞に分子標的薬の適応となるような遺伝子異常がおきていないかを調べたりします。