レーサーレプリカ世代垂涎のヤマハ「XSR900 GP」は走りも”あの頃”の熱さを思い出させる
■現代スーパースポーツとは異なるハンドリング
搭載されるエンジンは888ccの3気筒。最高出力は120PSを発揮します。かつてのレーサーレプリカと比べると圧倒的にハイパワーで、トラクションコントロール機構やウイリーコントロール、バンク角に応じたブレーキコントロールシステムも採用され、安心感も桁違いです。ライドモードもRAIN、STREET、SPORTの3種類が設定され、ユーザーが設定できるモードも2種類用意されています。 ライディングポジションは適度な前傾姿勢。初期型の1KTに近いと感じました。このモデルは、高い走行性能でサーキットを席巻しただけでなく、乗りやすいライディングポジションと座り心地のいいシートで、ツーリングなどにも使えるマルチなマシンでした。「XSR900 GP」のシートも肉厚でお尻が痛くなりにくいので、ツーリングも難なくこなせます。 3気筒エンジンの加速力は、エンジンやフレームを共有する「MT-09」と同じくかなり強烈。ただ、電子制御が効いているので乗りづらさはなく、リッタークラスのスーパースポーツと比べると気負わず乗ることができます。車重は200kgありますが、4気筒に比べてスリムな3気筒エンジンのおかげもあって、予想していたよりもコンパクトに感じました。シート高は835mmありますが、車体バランスがいいのか片足で支えるのにあまり緊張することもありません。 乗っていて一番気持ちよかったのはコーナリング。きっかけを与えると、スムーズに車体がバンクして舵角がつき安定して曲がっていくことができます。最新のスーパースポーツとは少し異なるハンドリングで、フロント荷重でコンパクトに曲がるより、リアタイヤのトラクションを感じながら曲がっていくのが気持ちいいフィーリングです。80年代にもヤマハのマシンは“リアステア”なんて言葉で表現されることがありましたが、それを思い出させるようなハンドリングでした。 言葉を変えれば、サーキットでタイムを詰めるような走り方をしなくても、爽快さを感じられるのが「XSR900 GP」のハンドリング。峠を“攻める”にような走り方をしなくても、スポーツライディングを楽しめるように仕上げられています。もちろん、エンジンはハイパワーで足回りも高性能なので、サーキットを走っても相当速いのは間違いないですが、そこまで攻めなくてもコーナーを楽しめるのは、大人のライダーにはありがたいところです。 発売から1ヶ月で1000台を受注し、年間販売台数の目標を超えてしまったという「XSR900 GP」。サーキットは走らなくてもスポーツライディングを楽しみたいライダーに一度は乗ってもらいたいフィーリングでした。
<取材・文/増谷茂樹>