遺影写真家 能津喜代房 ── 5000人の面影に寄り添って
面影が宿る遺影写真
年を重ねると、人の顔は変わっていく。社会的な顔が影を潜め、その人の「原形」とでもいうべき、濃密な遺伝子に支配された「素の顔」に戻っていく。 「面影」という言葉がある。記憶の彼方から、ゆっくりと立ち上がってくる顔や姿。遺影写真は、こうした「面影」を慕い、時空の経糸(たていと)緯糸(よこいと)の数奇な交わりによって自分が今存在していることに感謝できる、そんな写真であってほしいと願う。 写真と文=大西成明
【Profile】
大西 成明 写真家。1952年奈良県生まれ。早稲田大学第一文学部卒。「生命」や「身体」をテーマにした写真を撮り続けている。写真集『象の耳』で日本写真協会新人賞(1992年)、『地球生物会議』ポスターでニューヨークADC賞ゴールドメダル(1997年)、雑誌連載『病院の時代:バラッド・オブ・ホスピタル』で講談社出版文化賞(2000年)、写真集『ロマンティック・リハビリテーション』で林忠彦賞、早稲田ジャーナリズム大賞(2008年)を受賞。元東京造形大学デザイン学科教授。