ジュエリーブランドHASUNA Founder & CEO・白木夏子さん~大学教授として起業家育成にも力を注ぐ理由|STORY
――お一人で起業されたのですか? はい。そのため、「中米のベリーズに面白い貝殻があるから、来ませんか?」と連絡を受けた際も、私が現地へ向かいました。 そこで見たのは、白黒のコントラストが特徴的な「ウィルクス貝」と呼ばれる貝殻。その洗練された柄に魅了されつつも、この貝殻を材料として活用すれば、ベリーズの経済発展に寄与できる可能性を感じました。この思いから生まれた「l’unique」コレクションは、人々や地球環境、社会に対する配慮を大切にするジュエリーブランド「HASUNA」のアイコニックな一部となっています。
――開発途上国への支援という意味合いも考えると、やはりジュエリーの材料は海外のものが多いのでしょうか? 愛媛県西予市でとれるあこやパールや珊瑚など日本のジュエリーも大切にしたいと考えています。最近では金の価格の上昇や材料費の高騰、さらには円安も重なり、日本の企業や職人たちも困難な状況に直面しているので、ジュエリーの最終工程において、日本の職人さんたちにお願いするなど、国内の産業も支えられるように努力しています。
――今はHASUNAの経営だけではなく、起業家を育成することにも力を入れていると伺いました。 創業して10年ほど経ったとき、女性の起業家の輩出を目指す名古屋市の支援事業にディレクターとして参加し、初めて起業家をサポートするためのプログラム作成や講師として学生の前に立つという経験をしました。 その後、武蔵野大学から「アントレプレナーシップ学部を新設するので準備委員会への参加と、学部開設後に教員を担当していただけませんか」というお話をいただき、2021年の開設以来、教授としての仕事をさせていただいています。 ――エシカルなジュエリーブランドとは、また全然違うお仕事ですね。 昔から、声をあげづらい弱い立場の人や、何かを頑張りたいと思っている人たちがいたときに、何か自分がすることで、少しでも状況が好転したら嬉しいというか……役に立てたと感じることは、私にとっても大きな喜びなんです。 ――教授として多くの学生さんと触れ合ってみていかがですか? 10代の若者たちと関わっていると、大人が発する一言が何か大きな行動につながったりすることがあり、責任は重いなと感じます。実際、私自身も短大のときに出会った、写真家の桃井和馬さんのお話が今に続いていますので。
――経営者と教授、これからも2足の草鞋でという考えはありますか? 私の考えとしては、良い社会を築く事業を行っている起業家が1人いれば、その人の周りにいるスタッフやお客様、何十人、何百人といった多くの人々に影響が及びます。そのため、より優れた起業家を育てることは、社会をより良い方向に導くことにつながります。 なので、人を育てる仕事はこれからも続けていきたいと思いますし、私にとって初めての子どものような「HASUNA」は、これからもしっかりと育てていきたいと考えています。 撮影/BOCO 取材/篠原亜由美