度々鳴る夜間のコール音 「娘に電話して」施設にいる母が、夜中に電話をかけたくなる理由
認知症介護指導者の上村尚之さんが、認知症の様々な悩みに答えます。 【関連】「要介護おめでとうございます!」ムッとする義母 機嫌を直した、嫁の次の一言
Q.認知症の母(80代)は、施設に入居していますが、夜間に「娘に電話して」と騒ぐらしく、頻繁に施設から電話がかかってきます。私と話すと落ち着くようですが、夜中なので負担が大きく、施設で何とかしてほしいです(50代・女性)
A.施設に入居している方が、夜間になると家族と話したくなるというのはよくあることです。夜の静かな環境では、自分のいる場所がわからなくなるなど不安を感じやすくなります。夜になると娘に電話をしてほしがるということは、やはり不安の表れではないかと思うのです。入居者の方がなぜ不安を感じているのか、それを軽減するにはどうしたらいいのかといったことを考えるのは、私たち専門職の役目です。 例えば、一緒にお茶を飲みながら「電話をしてどうされたいんですか?」という質問から話をふくらませて、不安の原因を探っていきます。スタッフと話をするだけで安心する方もいます。施設の種別にもよりますが、夜間帯であればお母さんの話をゆっくりと聞く時間を確保できるかもしれません。 また、お母さんは「娘に電話してほしい」という訴えがなく、穏やかに過ごされている夜もあると思います。訴えのある日とない日の違いについて、施設側に教えてもらうことも大切になります。そこに穏やかに過ごせるヒントが隠れているかもしれないからです。相談者から施設側に「騒がなかった日はどんな様子でしたか?」「騒ぐ日と騒がない日の違いって何でしょうか?」と問いかけてみるのもいいと思います。施設側はそこで気づきを得て、ケア内容を見直してくれる可能性もあります。 利用者のご家族は預かってもらって申し訳ないという気持ちから、なかなか施設側に要望を言えないことがあるようなのですが、ご家族の負担を軽くすることも施設の責務ですので、本来は遠慮なく「夜間の電話はやめてほしい」と言ってもいいのです。そこまではっきり言いづらいという場合は、例えば「21時までなら電話してもらっても大丈夫です」と電話が可能な時間を具体的に示すのはいかがでしょうか。 単純に娘の声が聞きたいだけというケースでは、スタッフだけでお母さんの心を満たすのは難しくなります。そうした場合にも時間の約束があると、スタッフも電話をかけやすいはずです。 利用者のケアをしていると、どうしても専門職だけでは担いきれない場面はあります。無理のない範囲でご家族にも協力してもらえると、お母さんの不安が解消されていき、夜間、安心して過ごすことのできる日が、増えていくのではないでしょうか。
【まとめ】母親が施設で夜になると「娘に電話してほしい」と騒ぎ、頻繁に電話がかかってくるときには?
・施設側に「騒がなかった日はどんな様子でしたか?」「騒ぐ日と騒がない日の違いって何でしょうか?」と問いかけてみる ・施設側と相談者の間で「電話は何時までならOK」という約束をしておく ≪お悩みの内容については、介護現場の声を聞きながらなかまぁる編集部でつくりました≫
上村尚之