「人事の裏側」 有望な若手の将来を脅かす「男女トラブル」事件簿 私生活のもめごとがSNSで暴露され大問題に
■将来有望な若手の評価はダダ下がり Aさんに手紙と招待状を見せると、一瞬で顔が青ざめた。「これってどういうことか、聞いてもいいかな?」と問いかけると、ポツリポツリと事情を明かした。 Aさんによると、手紙の送り主は、数年前から交際していた社外の女性で、婚約していたことも、破談になったことも事実だという。 だが、本題はここからで、「破談になったのは、婚約中に別の女性と関係を持ってしまい、その女性の妊娠が発覚したことが原因だ」というのだ。
さらに驚くべきは、妊娠した女性が、同じ研究開発部の社員Bさんだということ。Bさんもまた新卒採用時に私が面接を担当し、内定を出した期待の新人だけに、ダブルの衝撃で口に含んだコーヒーを噴き出しそうになった。 「実は婚約していたこと、Bさんは知らないんです……。でも、責任もってBさんと結婚したいと思っています」と、蚊の鳴くような声でつぶやくAさん。 応援していいんだか、悪いんだか、よくわからない告白に困惑したが、ともかくこの件はBさんの耳に入らないよう「トップシークレット扱い」にしなくてはいけない。妙な正義感が湧いた。
私は「元婚約者の女性に対してはどうするつもりか?」と聞くと、「もう一度話し合って、誠意をもって対応をします」という。その後、無事に話し合いの場が持たれて解決したと聞き、ホッと胸を撫でおろしたが、それで一件落着とはいかなかった。 将来のリーダー候補にもなっていた優秀なAさんの、役員からの評価はダダ下がり。役員を巻き込んでいる手前、直属の上司にもこの件を共有せざるを得なく、上司からのAさんを見る目が厳しいものになってしまった。
ここでAさん自身、奮起して、挽回できればよかったが、この一件以来、自信をなくしてしまったのか、その後も満足な成果を出せていない。あれから10年が経つ今も“鳴かず飛ばず”で、昇進できていないと聞く。 ■男女間のもつれをSNSで暴露され 続いてのケースは、私がベンチャー企業で人事部長をしていたときのことだ。 ある日、広報部の担当者から「うちの社員CさんがX(旧Twitter)で炎上している」と報告が入り、急いでチェックすると、Cさんについて名指しで書かれている投稿があった。