性行為の低年齢化はなぜ起こっている? その背後に見える 「親子の問題」
初交年齢の低下に伴う、性病の増加や中絶率の上昇が問題となっています。現代の子どもたちは、なぜ簡単に性行為をしてしまうのでしょうか? 児童精神科医の佐々木正美さんは、その要因に親子関係があると指摘します。本稿では、幼児期の子どもとスキンシップを取る重要性について紹介します。 ※本稿は、佐々木正美著『【新装版】抱きしめよう、わが子のぜんぶ: 思春期に向けて、いちばん大切なこと』(大和出版)から、一部抜粋・編集したものです。
子どもが突然変わった、は間違い
私のもとには、思春期のむずかしさに「うちの子のことがわからなくなった」と不安を感じ、子育てに自信をなくしてしまったお父さんお母さんがたびたび相談に来られます。 わが子が小学校、中学校と成長する頃になり、ある日突然、親のいうことを聞かなくなった。口を閉ざし、自分のことを話さない。反抗する。暴力をふるう。学校に行かなくなる......。 そんな変わりように、戸惑い、いったいどうやってわが子と向きあえばよいのだろうと、悩まれているのですね。親から見たら、突然変わったように思えるかもしれません。 でも、思春期の問題行動は突然起こるものではありません。その根っこには、乳幼児期の育ち方が深く関係しているのです。 そのことを示しているひとつの例として、保育園や幼稚園で自分の性器をさわる子どもが増えているという現象があります。男児に限らず、女児もです。多くの保育士さんから、自分のおちんちんをさわってばかりいる子がいて困っている、という相談を受けます。なぜ、性器いじりをするのでしょうか。 私は、お母さんとのスキンシップ不足が原因ではないかと考えています。スキンシップというのは、肌と肌のふれあいだけではありません。どれだけ愛情をかけてあげているかということが重要なのです。 お母さんから十分に愛されていない、抱きしめてもらえない子どもたちがそういう行為をする傾向にあるのではないか。臨床の現場から、そう実感しているのです。 精神分析の創始者フロイトは、「人間は生まれながらにして性に関する衝動をもっている」といっています。フロイトは、この衝動を「リビドー」と呼びました。リビドーには2つの視点があります。 ・生きる原動力となる力 ・性ととても強く結びついた衝動 つまり、「性の衝動」とは性欲だけではなく、もっと広い、よりよく生きるため、より力強く生きるための「生の衝動」なのです。 そして、これは何も思春期、青年期になって出てくる衝動ではなく、生まれたときから人間がもっている本質的なものです。 性の衝動は、本来とても健康的で自然なものです。乳幼児期に、たとえばお母さんのゆたかな乳房にふれる、お母さんの乳房に唇でふれる、お母さんの肌に自分の全身でふれる。これらはスキンシップそのものです。そういう肌と肌のふれあいによって、乳幼児期は性の衝動が満たされていくのです。