《交流戦制覇》もわずか1年で解任…楽天・今江敏晃は「悲しき指揮官」令和の監督たちが直面する「過酷な現実」
ネット上で巻き起こる采配批判
長谷川:監督業の辛さでいうと、最近はネットやSNSでの批判もすごく激しいじゃないですか。 ぼくは高津臣吾監督の連載を5年間担当しているんですけど、試合中の上手くいかなかった場面に話が及んだ時に「あの時はこういう作戦で行こうと思ったんだけど、結果的にああなった。あれさ、本当はこうだったんだよ」みたいなことを、ポロっとこぼしてくれるときがあるんですよ。首脳陣は事前にさまざまなケースを想定して作戦を立てているんだなとわかるんですけど、SNS上のファンには「素人目に見てもおかしい」ってあれこれと書かれちゃう(笑)。でも、我々ファンから見えるものって、ほんの少しなわけですよね。 村瀬:そうそう。ただ残念なことに、野球っていうのはそれで盛り上がるところもあるんですよね。居酒屋で「監督は間違っている!」と語り合う、それで人気を保っている部分もありますから(笑)。監督は本当に大変ですよ。 長谷川:高津さんに、球場のヤジについてどう思われているのか聞いたことがあるんです。そしたら「野球とはそういうものだから。その人の中では、その日は高津よりも名将だったんだろう」とおっしゃっていました。 「ただ、ぼくは実際に監督だから、結果論で作戦を立てることはできない。ファンの方は『俺ならここはエンドランだな』とか言って、エンドランじゃなくても成功した時に、そのことはもう忘れちゃいますよね。でも、『ここは左のピッチャーだな』と言ってうまくいったら『ほら、俺の思ったとおりだ』と成功体験が増幅される。そういうものだからしょうがない。だから長谷川さんも自由に『高津、ひでえな』って、言っていいですよ」って(笑)。 そこまで思い詰めていらっしゃるのかと心配になりました。 村瀬:「勝てば官軍」というのが、一番わかりやすいのがプロ野球の監督ですね。どんなに人格者でも、采配が優れている人でも、負けたらボロクソに言われる。ヤクルトや横浜は優勝経験が少ないなか、名将を生んできたというのは素晴らしいことですよ。 長谷川:令和気質の選手の引き締めに悩み、ファンの声に頭を痛めるなかで結果を出し続けなければならない。監督というのは大変な職務ですよ。だからこそ私たち野球ファンは、退任する監督に「プロ野球を楽しく盛り上げてくれて、ありがとう」と、感謝の念を持たなければなりませんね。 ………… 【もっと読む】『「初激白」今江敏晃前監督が電撃解任後、初めて語る楽天の「真実」』 はせがわ・しょういち/'70年、東京都生まれ。'03年に独立。近著に『海を渡る サムライたちの球跡』『プロ野球アウトロー列伝 異端の男たち』など むらせ・ひでのぶ/'75年、神奈川県生まれ。'00年よりライターとして活動。著書に『虎の血 阪神タイガース、謎の老人監督』など
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