《交流戦制覇》もわずか1年で解任…楽天・今江敏晃は「悲しき指揮官」令和の監督たちが直面する「過酷な現実」
IT企業の発想…?AI監督の誕生なるか
村瀬:とにかくすぐ結果を出すことを求められている。IT企業の発想ですよね。オーナーの三木谷さんがすぐに成果を求めるタイプなんでしょうけれども。 長谷川:楽天が球界に参入してから20年も経つわけで、それでいまだにこういう監督人事をやっているということは、三木谷さんが社長である限りは今後も変わらないでしょう。そうなると、楽天からは名監督は出ないだろうし、まず成り手がいない。 村瀬:ぼくが思うに、三木谷さんは確実にいつか監督をAIにしようとしていますね。これは間違いないでしょう(笑) 長谷川:いま、いろんな監督でデータをとっているのかな(笑)。1年で交代した6人の監督って、最初の就任段階から暫定的という感じだったじゃないですか。平石洋介にデーブ大久保、ブラウンとか三木肇も。結局、複数年やったのって野村克也、星野仙一、石井一久だけでしょう。大物をブッキングできないときに、つなぎで一年任せるっていうね。球団ができて20年経つんだから、そろそろ生え抜きの監督がやったっていいよね。 村瀬:それこそ嶋基宏とかが本来やってなきゃいけないですよね。あとは渡辺直人とか……。それでいうと、2019年に監督を務めた平石さんは唯一の生え抜きでしたが、3位になったのにたった1年でクビでした。PL出身、在任1年で終わったとなると、今江さんと同じ系譜を辿ることになったんですね。
「憧れの夢」が下火に…現代の監督業の辛さ
長谷川:これまで今季退任される5人の監督を談じてきたわけですが、幸せな終わり方をするほうが監督としては少ないんだよね。監督業というのは辛いですよ。 これは昭和の頃よく言われていたことなんですけど、男として生まれたら3つの夢がある。連合艦隊の艦長と、オーケストラの指揮官と、プロ野球の監督、これが男の3つの夢だと。今、連合指揮官の監督をやりたい人いないじゃないですか。オーケストラの指揮をやりたい人だってどれくらいいるのかなと思うんですけど、野球の監督もそういう風に下火になりつつある気がします。 村瀬:鳥谷敬さんは普通にもうやりたくないと言っていますね。里崎智也さんも「あんなにリスキーなの、絶対やらないよ」って。 長谷川:里崎さんが以前言っていたんだけれど「優勝したとしても、監督の年俸はせいぜい1億円が1億5000万円になるぐらい。にもかかわらず、成績が悪ければ3年契約のはずが2年でクビを切られることは普通にある。そのための違約金や保証金も曖昧だし、一般社会だとこれって契約不履行でしょう。もし自分がやるんだったら弁護士や司法書士をつけて事前にしっかり契約書を作るけど、そうまでして頼んでくるチームがあるとは思えないから僕は一生やりません」って。やらない理由も理路整然としている(笑) 村瀬:ほとんどの監督たちが退任した後に、顔色が良くなって楽しそうにされているのを見るだけで、監督業って本当に苦しくて辛いんだなっていうのが伝わってくるじゃないですか。楽しかったという話はなかなか聞こえてこないですね。 長谷川:最近、間接的にそれを実感したのが落合福嗣くんのXのポスト。彼が「監督時代の父・博満は急に倒れたり、体調不良になったりと、家族が見ていて本当に心配になるくらい辛そうだった。監督という仕事は本当に大変なんだ」と、当時の思い出を投稿しているんだよ。あの落合さんでさえそこまでの重圧があったんだと思うと、それを乗り越えてまでやりたい、俺がチームを率いたいと思う人が、果たしてどれくらい今後出てくるのか。 村瀬:最近は一般企業でも管理職になりたくない若者が増えていることがニュースになりました。責任が重いのに、批判ばかり受ける損な役回りだと。 こうなってくると、現役時代の実績とは関係なく監督専任の人が出てきてもよさそうなものですが、やっぱり日本の野球界だと難しそうですね。 長谷川:一般企業で外国人CEOを連れてくる潮流がありますが、一時期は野球界も外国人監督が多かったじゃないですか。過去には1年に3人くらいいた時期もありましたし、なんだかまた外国人監督の流れが来そうな気もしますね。 村瀬:プロ野球の世界も、日本社会を如実に反映しているということですね。