久保寛子展「鉄骨のゴッデス」(ポーラ ミュージアム アネックス)開幕レポート。都会のビルの一角で新たな神話に出会う
東京・銀座のポーラ ミュージアム アネックスで久保寛子の個展「鉄骨のゴッデス」が開幕した。会期は6月9日まで。 久保は1987年広島県生まれ。テキサスクリスチャン大学美術修士課程修了。先史芸術や民族芸術、文化人類学の学説のリサーチをベースに、身の回りの素材を用いて彫刻作品を制作するアーティストだ。本展は、久保にとって東京における初の個展となる。 ホワイトキューブの展示会場には、工事現場で使用されるようなブルーシートやプラスチックネット、セメントといった現代における身近な素材で制作された彫刻や土器などが展示されている。ビルの3階であるにも関わらず、さながら遺跡に足を踏み入れるような不思議な鑑賞体験だ。 「生活と芸術が結びついてた頃のものづくりに惹かれる」と語った久保。柳宗悦が民藝運動において提唱した「用の美」に共感を示しつつも、先述したような工業製品のなかに、宗教美術や民俗芸術といった「心の用」、そして「ゴッデス(女神)」を見出すことが可能かどうかを制作を通じて探っているようであった。 プラスチックネットで囲われた中央内側にはその新作《鉄骨のゴッデス》が鎮座するほか、セメントを流し込んでつくられたというアミュレットシリーズなど約60点が展示されている。銀座という都会のビルの一角で、現代に新たに語られようとする神話の断片に出会うことができるだろう。
文・撮影=三澤麦(ウェブ版「美術手帖」編集部)