女優・奈緒が、藤ヶ谷太輔と“試行錯誤”「婚活アプリ」から始まる、30代のリアルな恋愛観
「これは私の傲慢さだ」と受け入れて生きる
――奈緒さんは本作について「自分が好きになれなくて蓋をしたい気持ちを“傲慢と善良”という言葉が救ってくれるような、とても希望のある作品」というコメントをされていました。そこにいたった思いも教えてくれますか? 例えば、パートナーのことを“選ぶ”という表現をするときに、私はその言葉自体に何かモヤモヤと気持ちのよくないような、言葉の居心地の悪さみたいなものがすごくありました。それも一つの"傲慢"なのかもしれません。 人間はそういう傲慢な部分がある生き物だし、私はこの作品を観て、原作を読んで「赦そう」と思えたんです。赦そうと思える自分になりました。 何となく「これは傲慢じゃない」と今までだったらもしかしたら手放したかもしれない、蓋をしたかもしれない自分自身の思考や行動についても、これからは「いや、これは私の傲慢さだ」と受け入れて、そこから行動を変えていくこともできる気がしました。そういう意味で、すごく希望をもらった作品でした。 ――ご自身の傲慢さを感じる部分について、もう少し伺ってもいいですか? 興味深いです。 自分が知らないことについて、「いや、私はこれで(知らないままで)いいんだ」と自分を納得させてきたときがあったんです。自分の中でまだ知らないものが怖いから、どこか「自分が正しいんだ」と未知のものを少し見下していたのかもしれない。 けど、最近は知れることを知ろうとしない罪みたいなものもあるのかな、と感じたりもしていて。自分が今まで触れてきていないものでも、知れる機会があるんだったら知ることが大事だと思うようになりました。そうした私の今まで蓋をしてきた選択は「傲慢」と名付けようと、今回の原作と出会って思ったんです。 ――ご自身の傲慢さを受け入れ、変わられたんですね。 だから、すごくいろいろなことを今まで以上に知りたいと思うようになりました。他人と関わるときも、今までの自分よりは一歩踏み込んでみて、“この人はこういう人だ”と判断するのをやめようと思うようになりました。判断することで自分が安心したいだけなのかもしれないと思うので。 そして今自分を大切にしてくれている人たちを大切にする時間が必要だと感じました。身近な人にほど、思っていることを言えていないから、きちんと対等な目線で伝えようと意識し直しました。 架くんと真実ちゃんを見ていて、私はとにかく羨ましかったんですよね。ここまで自分が思っていることをカッコ悪くぶつけてさらけ出せる人がいることに。私ももう少し自分の傲慢さに蓋をせずに、自分自身が受け入れて「この人と一緒にいたい」という確信を与え合えるような関係性を築けたらいいなと思います。 ――ありがとうございました。今の時代に響く内容とおっしゃっていましたが、奈緒さんが特に届けたい思い、大事にしているメッセージを教えてください。 これからの時代、自分で選択するということがどんどん増えていくと思います。選択の自由があるということに、ときに人はストレスを感じてしまうとも思うんです。 『傲慢と善良』で私が演じた真実のように「誰かに決めてもらうほうがラクだ」ということも実際にあるはずなので、自由であるほどかえって自分を窮屈にしてしまうことがあるんじゃないかと、私自身感じたりもしています。 それでもこのタイトルを見て、少しでも自分の中の傲慢さや善良な部分とか、ちょっとでもシンパシーを感じたり、心が引っかかるところがある方は、何かを受け取っていただけるのではと思います。ぜひぜひ、劇場に足を運んでいただけたらうれしいです。 奈緒(なお) 1995年2月10日生まれ、福岡県出身。2013年俳優デビューし、NHK連続テレビ小説『半分、青い』の親友役で注目を浴びる。2019年に『終わりのない』で初舞台、同年『ハルカの陶』で映画初主演を飾る。主な出演作に、ドラマ『ファーストペンギン! 』、『あなたがしてくれなくても』『春になったら』、映画『マイ・ブロークン・マリコ』、『先生の白い嘘』など。公開待機作に主演ドラマ『あのクズを殴ってやりたいんだ』(TBS系10月期火曜22:00~)など。
赤山恭子