完全復調の衝撃…なぜドイツ代表は蘇った? すべてを変えた男の存在、EURO優勝候補に名乗り【コラム】
フランスとオランダに連勝したドイツ代表、復帰のトニ・クロースが示した絶大な影響力
アウェーでフランスに2-0、ホームでオランダに2-1。ドイツ代表が完全に復調している。この2試合で自国開催のEURO(UEFA欧州選手権)における優勝候補に名乗りを上げた格好だ。 【写真】「素晴らしい」「GKキットにすべき」ドイツ代表のEURO2024に向けた新ユニフォームデザイン トニ・クロースが代表復帰した。これがすべてを変えたと言っていいだろう。 1人の加入でこれだけ違うものかと驚くくらい、ドイツは大きく変わっていた。EURO2020以来の代表復帰となった34歳のベテランは、4-2-3-1システムのボランチの位置から流れのなかでディフェンスライン近くへ引き、そこから的確なパスワークで攻撃のリズムを司っていった。 ボランチが左センターバックの横へ下り、左サイドバックを高い位置へ上げる。この可変自体はいまどきなんら新しいものではない。例えば、かつてアルベルト・ザッケローニ監督が率いていた時の、遠藤保仁の役割と同じだ。そしてクロースも遠藤のようにチームに絶大な影響力を与えていた。これは「形」の効果ではなく、あくまで「人」によるものだ。 日本代表のあの可変を導入したのはザッケローニ監督だった。遠藤の独断でああしていたわけではない。しかし、遠藤が不在だと同じようには機能しなかった。ドイツの場合もクロースがいてこその効果である。 いつでもパスを出せるし、ドリブルでかわすこともできる持ち方。角度をつけたリリース。ポジショニングとボールの動かし方の妙。こうした技術と戦術はクロース固有のもので、教えようとして教えられるものではない。ユリアン・ナーゲルスマン監督の功績はクロースを復帰させた決断がほぼすべてだろう。 メトロノームのようなクロースが刻むリズムによって、チーム全体が落ち着きと自信を得ていた。ジャマル・ムシアラ、フロリアン・ビルツ、イルカイ・ギュンドアンの2列目が活性化。ビルツとムシアラが左右のハーフスペースでプレーできるようになった。1トップのカイ・ハフェルツも含めた4人の技巧派が存分に力を発揮していた。