心を揺さぶる、声の饗宴「スプーンの盾」声優・山口勝平と諏訪部順一が語る、観客の想像の翼を広げる“生”の力
劇作家・藤沢文翁が唯一無二の世界観で原作・脚本・演出を手がけ、東宝とタッグを組んでおくるプレミア音楽朗読劇VOICARIONシリーズ。その第17弾公演となる「スプーンの盾」が、12月に大阪、1月に東京にて上演される。2022年の初演から、今回で再再演となる人気作でもあり、トータルで1か月超のロングラン公演に日替わりで登場するのは、声優・ミュージカル・舞台のトップランナーばかり。 物語の舞台は、フランス革命後にナポレオンが活躍する時代。彼のもとで、手腕をふるった料理の帝王・カレームと天才外交官・タレーランを中心に、王侯貴族をもてなす“料理外交”が繰り広げられる。そこに、カレームの盲目の右腕・マリーが加わり、武器に頼らず、食卓を囲んだ“世界一美味しい戦争”が描かれる。 TVガイドWebでは、今回の「スプーンの盾」に出演する豪華キャストの対談をお届け。山口勝平と諏訪部順一は、共にVOICARIONシリーズの常連役者。声で人々を魅了するプロフェッショナルが、生の舞台にかける思いとは? お互いの芝居の魅力や、今回初めて演じる役に対する意気込みを語ってくれた。
――今年で3回目の上演となる「スプーンの盾」。お二人は22年の初演時からご出演されていますが、本作品のどんな部分に魅力を感じていますか? 山口 「幸いなことに、VOICARIONシリーズではさまざまな作品に出演させていただいていますが、中でも『スプーンの盾』は特に印象に残っています。物語の構造がシンプルで、見る人に分かりやすく、親しみやすい作品ですよね。しかも初演時は、ロシアによるウクライナ軍事侵攻が始まったばかり…。公演は3年目を迎えますが、未だ収束の気配はありません。平和への思いが描かれた『スプーンの盾』を演じるたびに、世界の平和について深く考えさせられますね」 諏訪部 「本作で描かれている物語は、現在進行形で起こっている出来事をイメージして創作されたものではなく、全く関係はありませんが、大きな紛争が平和的に解決されるというカタルシスを味わえます。そこが非常に面白いですね」 山口 「今の時代にこの作品が生まれたことは、偶然ではないように思います」 ――藤沢さんの作品は、中世ヨーロッパや戦国時代の日本など、現代とは異なる時代を舞台にしたものがほとんどですが、現代の私たちにも強く響くものがあります。 諏訪部 「どの作品も、核となっているテーマが普遍的なものだからでしょうね。どれだけ時が流れても、喜怒哀楽といった人間の情緒の根源はさほど変化していませんから。それに、むしろ舞台が見知った現代ではない方が、リアルさを持たせつつ、よりドラマティックに、ダイナミックに感情の動きを表現できるような気がします」 ――このVOICARIONシリーズは、一つの演目を日替わりキャストの共演で楽しめることが魅力の一つ。出演されているお二人には、どのような発見や楽しみがあるのでしょうか? 山口 「毎回、その日、その時の座組でしか出せない、独自の色合いが自然と生まれてくるんです。ただ、これだけ組が多いと、稽古で全員そろうことができず、本番で初めて顔を合わせるような回もあって…。それはもうすごい緊張感なんですけど、今となってはそのスリルを楽しむ境地にもなってきましたね(笑)。今回も、どんな化学変化が生まれるのか、ワクワクします」 諏訪部 「まさに一期一会ですよね。稽古の段階から一緒に作品を作り上げていくのではなく、本番当日に初めて合わせることも多いです。相手の手の内がよく分からない、『当日ドン!』という状況がとても刺激的で楽しいですね」 山口 「そういえば、キャストスケジュール表に“カレーム役 安元洋貴”という回を見つけて驚きました。その日は、諏訪部くんがナポレオン、大塚明夫さんがタレーランを演じるんだよね?」 諏訪部 「ええ。これまでカレームを演じてきたキャストは、ほとんどが高めの声の方です。高めでなくとも、基本的に線の細いイメージの人物として皆さん演じられてきました。野太くマッチョな声の安元くんが生み出すであろう、新たなカレーム像が楽しみですね」 山口 「(笑)。こういう面白さがこの朗読劇にはあるんですよ」