加熱基準満たさない「牛レバー」販売容疑 大分の加工業者を逮捕
「生レバーの風味を再現した」と称し、食品衛生法の加熱基準を満たさない牛レバー「牛レバーハム」を販売したとして、京都府警は20日、大分県中津市の食肉加工会社「Meフードシステム」の社長、桝田治基容疑者(66)=同市=と同社の食品衛生管理者、浜田豊市容疑者(66)=福岡県豊前市=を同法違反の疑いで逮捕し、発表した。ともに容疑を否認している。 【写真】会社が製造、販売していた食肉製品。加熱基準を満たしていないとされる=2024年11月20日午後4時46分、京都市伏見区、木子慎太郎撮影 府警によると、食肉製品について加熱基準の違反で摘発するのは全国初という。「牛レバーハム」は中津市のふるさと納税の返礼品として採用されていた。全国に出荷され、昨年度の販売数は約32万個、売上額は約1億円にのぼる。 生活保安課によると、2人は昨年11月、同社の加工所で食品衛生法に基づく加熱基準(中心部の温度を63度で30分間加熱)を満たさない食肉製品「牛レバーハム」を製造。今年1月、「生レバー風味を再現した画期的なハム」とうたい、京都市内で飲食店を経営する会社に販売した疑いがある。また、今年4月に同様の食肉製品を製造し、6月にインターネット上で販売した疑いがある。 同社の工場には、47度で40分間に設定された加熱器があったといい、基準を下回る温度で加熱したとみられる。 桝田容疑者は「法定通り加熱しているから違反していない」、浜田容疑者は「加熱不足はあり得るかもしれないが、故意にしたことではない」と供述している。現時点で健康被害の報告は確認されていないという。 社長らが食品衛生法違反容疑で逮捕された大分県中津市の「Meフードシステム」は製造・販売した鶏レバーハムから糞便(ふんべん)系大腸菌群などが検出され、昨年と今年の2回、立ち入り調査をした大分県から商品の回収命令などを受けていた。県食品・生活衛生課によると、昨年6月、同社の「鶏レバーハム」が原因で東京都の飲食店利用者が発熱や下痢症状を訴え、大分県北部保健所が製造所に立ち入り調査。サルモネラ属菌などが検出されたため、販売した商品の回収命令と在庫の販売禁止命令を出した。 今年7月にも千葉県船橋市保健所から同社の鶏レバーハムを食べた飲食店の客が体調不良を訴えたと連絡があり、県が立ち入り調査。糞便系大腸菌群が検出され、県が回収命令を出した。 県は鶏レバーハムは全国の飲食店に販売されたとみている。 県は昨年10月に複数の製造所に立ち入り調査をしたが、その際に同社の製造所で牛レバーについても細菌検査をした。このときは食品衛生法の成分規格で定められた大腸菌などの細菌は見つからず、問題がなかったという。 県は同社に行政的な処分を出すかどうか、捜査の行方や同社の動向を見守りながら検討する構えだ。(木子慎太郎、徳山徹)
朝日新聞社