徳田氏辞職の「衆院鹿児島2区」補選のポイント /早稲田塾講師 坂東太郎のよくわかる時事用語
(2)徳洲会票の行方は
毅前議員は医療グループ「徳洲会」創設者である徳田虎雄氏の息子。毅前議員にまつわる容疑は運動員の買収など「徳洲会マネー」が背景にあります。したがって打越候補がこの問題を「許せない」として自民党の金権体質を突くのは確実です。こうなると徳田前議員をもり立てたであろう徳洲会の助力は期待できません。さすがにおとなしくしているでしょうから。 ではその点に限って打越有利かというとそうでもない。対立候補の金子万寿夫県議の経歴が考え抜かれています。金子候補は自民党の保岡興治衆議院議員(鹿児島1区)の元秘書。この保岡議員と虎雄氏はかつて「奄美群島選挙区」で「保徳戦争」と呼ばれた血で血を洗う選挙戦を展開したことで有名です。96年から実施された今の衆院選挙制度から奄美群島選挙区は鹿児島2区に編入。したがって「保徳戦争」の敵役だった保岡系列の金子候補に徳洲会グループが塩を送るとは思えません。 そこがミソで、今回に限ってはこの点が防波堤になるのです。「批判された徳洲会マネーの恩恵を最初から受けるはずがない金子候補」という打ち出しが案外効果的。旧奄美群島選挙区票の半分は保岡系であり、金子候補も奄美出身。鹿児島2区における旧奄美群島選挙区の有権者は半分弱なので十分戦えると金子陣営は踏んでいるでしょう。ただそうした計算をあざといと反発し、何であれ自民党議員の不祥事は許さないと有権者が判断すれば机上の空論と化すかもしれません。
(3)消費増税の影響は
本来でしたら増税を決断した安倍晋三首相の下にある金子候補にとって4月1日から始まり、ようやく痛税感が行き渡った月末の選挙は逆風。ところが打越候補は民主党所属国会議員であった時から増税賛成。そもそも増税法は民主・自民・公明の「3党合意」で可決成立した経緯もあります。だから争点にならないという見方もできましょう。とはいえ増税に腹が立ったという理由で1票を行使する有権者がいたら「より許せない方」へ投じるという行動もあり得ます。