富山の介護施設で虐待 60歳女性が7人に暴行、暴言
●市が行政処分、合併後初 富山市は25日、介護職員による入所者への暴行や暴言などの虐待があったとして、同市花崎の「おおやま病院介護医療院」に対し、1月1日から3カ月間の新規利用者の受け入れ停止と介護報酬を3割減とする行政処分を行った。市が介護保険法に基づき、行政処分を行うのは2005年の市町村合併後では初めて。施設が虐待把握後も適切な防止対策を講じなかったことを重視した。運営は継続できる。 ●施設把握も対策講じず 施設によると、女性介護職員(60)が今年春から6月ごろにかけ、入所者の男女7人の頭や手をたたき、人格を否定する発言をするなどの虐待をした。「あんたのこと嫌い」と言われたり、着替えの際に体を強く押さえつけられたりした入所者もいた。治療が必要なけがをした入所者はいないとしている。 昨年11月に施設内の虐待防止委員会で女性職員の不適切な言動が報告され、上司が口頭で注意した。今春には女性職員による虐待が発覚したが、施設側は十分な対応を取らず、虐待はその後も続いた。7月に施設側が市に通報した。 市が8~11月に立ち入り調査を実施。施設側が虐待の兆候や虐待行為を把握していたにも関わらず、有効な対策を講じなかったことから、介護保険法の人格尊重義務違反に当たると判断した。25日に施設に対し、改善計画を提出するよう通知した。施設の8月時点の入所者は56人で、運営は継続する。 ●市、コロナで監査できず 市内に特別養護老人ホームや介護医療院などの介護保険施設は54施設あり、市が原則3年に1度、監査を行うことになっている。おおやま病院介護医療院に対しては19年度の設置許可以降、新型コロナ禍の影響もあり監査をしていなかった。 富山市の豊岡秀樹介護保険課長は「虐待の兆候に全て気付くのは難しい」と話した上で、事業者に義務付けている虐待の通報も把握のためには重要だとした。市は市内約820の介護事業所に注意喚起の案内文書を出した。 立山町では6月、特別養護老人ホーム「竜ケ浜荘」で入所者への虐待があったとして、県が運営する社会福祉法人「立山福祉会」に7月から3カ月間、新規利用者の受け入れを停止させ、介護報酬を減額する行政処分を行った。