【軍事転用への抗議も…】新技術が結集の国際航空宇宙展 メーカー担当者が小声で打ち明けた「本音」
イスラエルの軍事企業も参加
世界の軍事費の総額は370兆円超――。今年4月、ストックホルム国際平和研究所は世界の軍事費が9年連続で増加していると発表した。そんな中、10月16日から4日間、東京ビッグサイトで開かれたのが「2024国際航空宇宙展」だ。 【写真】空飛ぶ車も登場…!国際宇宙航空展・驚きの展示内容 航空宇宙関連では日本最大級となる同展は、航空宇宙産業の拡大と多様化がメインテーマ。最終日のみ一般公開され、ロケットの模型や空飛ぶ車を興味深く見つめる家族連れの姿が散見された。某メーカーの担当者が言う。 「この展示会はファミリー向けのイベントではありません。各国の軍需企業が、国防関係者や関連業者に対して最新の戦闘機やミサイルを売り込むのが本来の目的。表向きは民生品でも、軍事転用が可能な製品やテクノロジーを紹介しています」 会場の外では「死の商人にならないで」と書かれたチラシを手に、展示会の中止を求める抗議活動が行われていた。 会場には三菱重工、IHI、川崎重工をはじめ、アメリカやイギリス、韓国などの企業が参加。今回、特に注目されたのがイスラエルの軍事産業大手「エルビット・システムズ」だ。同社は、ガザ地区への攻撃を続けるイスラエル軍に武器を供給している。 「GPS誘導迫撃砲弾などをイスラエル軍に提供している同社は展示会で『最先端の誘導迫撃砲弾が蓄積してきた戦闘経験を踏まえ、マーケットリーダーの地位を強固なものにする』などとアピールしていました」(同前) ◆ステルス機が並び… だが、エルビット・システムズのブースは展示会最終日に突如閉鎖され、ブースの撮影も禁じられた。 会場外で反対活動をしていた女性は「私たちが抗議をしたからでしょう」と主張したが、近隣ブースのスタッフは、「最終日は一般公開の日。商談に繋がらないから閉じたのだと思います」とつぶやいた。 今回の展示でひときわ目を惹いたのが、三菱重工が開発しているステルス性を追求した「戦闘支援無人機」と、日英伊の3国で開発を進めている次期戦闘機の模型だ。 次期戦闘機がなぜ日英伊の3国で開発されているかといえば、「航空自衛隊で運用されている日本のF-2戦闘機と、英伊で運用されているユーロファイター・タイフーンが、同じタイミングで後継機を必要としていたため」(軍事ジャーナリスト)だという。 ブース前にいた係員によれば、AIにより自律的に飛行する複数の無人機をネットワークで連携させ、有人戦闘機がミサイル発射などの指令を出すという次世代型戦闘システムを3国で分担しながら開発しており、「日本は2035年頃の配備を目指しています」という。 民間航空機のイメージがある欧州のエアバス社は、開発中の軍用無人ヘリコプターの実物大模型と軍用輸送機の模型を展示。ロッキード社は海兵隊が使用するステルス戦闘機F-35Bの模型をPRするなど、競うように独自の最新技術をアピールしていた。 ◆「軍事転用」の有無を聞くと… 会場には発泡スチロール製のドローンも展示されていた。 「見た目は安そうですが、価格は1300万円くらいします」 そう話すのは大手電子機器商社の担当者だ。 「このドローンは1人でオペレーションができて、20㎞先まで飛び、自分で帰ってくることができます。IRカメラが搭載されており、夜間でも映像が撮れる。イタリアの消防は夜、森林で行方不明者を探すのに、この製品を使ったと聞きました」 軍用でも使われているのか聞いてみると、「あんまり言っちゃいけないと言われているんですが……」と言葉を濁しながら、こう続けた。 「これは米軍と開発したもので、米軍をはじめ、フランス軍、ドイツ軍で既に導入されています。オーストラリアや防衛省も導入を検討しています」 「風を可視化する」という装置を展示するブースもあった。担当者によると、半径15㎞以内にいるドローンを探知する能力を持つそうだ。本来はコンテナほどの大きい機器だったが、最新型のものは高さ約100㎝、幅が60~70㎝までサイズダウンしたのがウリで、軍事的な利用も可能とのこと。 別のブースでは洋上の密漁などを巡視するために開発された水面から自走して離陸できる小型無人機などもあった。 技術革新はさまざまなメリットを人類にもたらす。一方で軍事転用も容易だ。開発者側にも、倫理的な判断が強く求められる。
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