「リーグワン」開幕直前に全選手薬物検査実施…なぜラグビー界から“麻薬事件”がなくならないのか
対照的に今回は当該チームの活動自粛はなく、リーグ戦中止もない。対応が異なる理由を、東海林専務理事はトップリーグとリーグワンの違いにあると説明した。 「主管権の移譲に伴い、各チームが自らの責任とコスト負担を持って試合を遂行していく形になっている。そのなかで一チームにおける今回の事案が、すべてのチームに対して影響を与えるということは必ずしも適切ではないという判断です」 ならば、さらなる陽性者が出た場合はどうなるのか。東海林専務理事は「検査結果に基づき、必要と判断される場合はリーグの運営に対して見直しを図る」と語った。 しかし、当該選手の所属チームが予定通り試合を開催するか否かに対しては、試合開始まで48時間をきっての中止はオペレーション的に難しいところがあるとして明言を避けた。 「万が一にもそういう(陽性の)選手が出た場合は、基本的にはその選手は出場停止となり、チームに関しては状況を見ながら判断する」 まずは全選手を対象とした違法薬物検査をスピーディーに実施。同時に【1】リーグワンのインテグリティ取り組みに対する体制の強化【2】クラブにおける選手、関係者に対する意識や行動改革の徹底【3】抑止の強化――を早急に進めていく。 具体的には【1】弁護士を含めた第三者を招聘したインテグリティ委員会や相談窓口の設置【2】行動ガイドラインの策定やクラブによる2カ月に一度の定期研修の実施【3】不定期の違法薬物検査を高頻度で実施し、さらにインテグリティ違反に対する罰則の強化ならびに規約・規定の改定の検討をする――となっている。その上で東海林専務理事はこう明言した。 「これらに基づいて、リーグワン2022は予定通り開催したいという考えです」 構想が初めて公表されてから約2年半の歳月をかけて船出する、さまざまな期待が込められた新リーグをしっかりと成功させ、同時進行でラグビーそのものに対する社会的な信頼をも取り戻していく。二兎を追う戦いが幕を開ける。 (文責・藤江直人/スポーツライター)