「リーグワン」開幕直前に全選手薬物検査実施…なぜラグビー界から“麻薬事件”がなくならないのか
検査は唾液を採取する形で行われ、今回はすぐに検査結果が出るコカインと大麻が対象になる。会見から一夜明けた5日から開始されクボタスピアーズ船橋・東京ベイと埼玉パナソニックワイルドナイツが国立競技場で対戦するカードのみが組まれている7日にかけて、検査費用をリーグ側が全額負担して行われる。 新リーグの記念すべき旗揚げへカウントダウンに入った段階で、急きょ実施される違法薬物検査には、リーグワンと日本ラグビー協会が抱く危機感が反映されている。 「現実問題として今回が3回目なので、ラグビー界として事実を重く受け止め、猛省すべき問題だと考えている。全チームから賛同を得て実施する薬物検査には、陰性であることを確認してリーグワンに臨みたい、という意思が反映されている」 世間から「またラグビー界か」と、いやが上にも薬物使用を連想される状況を早急に変える必要があると東海林専務理事が訴えた。 同席した岩渕専務理事も「統括団体や加盟団体ということを越えて、一緒になって取り組んでいきたい」と力を込めた。 「コンプライアンスの遵守とインテグリティ(誠実さや高潔さ)の追求はラグビーの根幹を成す。リーグワンだけではなく日本のラグビー界にとって大きな問題であり、社会的な説明を果たして早期の信頼回復に努めていかなければいけないと考えている」 トップリーグ時代の不祥事を受けて、各チームにはインテグリティオフィサーが設置され、さまざまな研修を介してチームのインテグリティ活動が強化されてきた。その過程で2度の違法薬物検査が実施されたなかで、再び逮捕者が出たのはなぜなのか。 東海林専務理事は「リーグワンのマネジメントに問題があった」と猛省した。 「昨年6月にリーグワンが発足し、トップリーグから移行してきたなかで、インテグリティに対する取り組みの優先順位が下がっていたと認めざるを得ない。これが今回の事案が発生した大きな要因のひとつであると認識している」 13人制のオーストラリア代表に選出された経験を持つウイングのファーガソン容疑者は、リーグワンへ向けた新戦力として昨年9月に東葛と契約し、同10月末に来日した。しかし、海外にいる代理人と行ったヒアリングのなかで、身辺調査が不十分だったかもしれないと東葛側は振り返っている。入国時の薬物検査も実施されていない。 トヨタ自動車で逮捕された1人と、日野の選手も外国籍だった。文化や風習が異なる外国籍選手との契約について岩渕専務理事は代理人とより緊密なコミュニケーションを取り、日本において薬物は絶対に許されないと認知させる対策が急務だと訴えた。 「代理人とのコミュニケーションや、契約している選手への教育を何らかの形で、日本ラグビー協会がリーグワンを助けていくことも必要だと考えている」 トヨタ自動車は逮捕者を出した後にトップリーグカップへの出場を辞退した。日野も無期限の活動停止を決め、さらにトップリーグそのものも、日野の選手が逮捕された後に予定されていた2020年3月の3節分、計24試合を選手へコンプライアンスを再教育する時間にあてるために急きょ中止とした。