【あなたらしく、わたしらしく-男女共生はいま-】生理休暇 取得しづらく形骸化 職場での理解促進
「またか」。県内の広告・印刷会社に勤めている30代女性は職場で鈍い生理痛に襲われ、思わず顔をゆがめた。痛みが集中力をそぎ、依頼のあったチラシや名刺のデザインが思い浮かばない。生理(月経)になると、腹痛と吐き気、眠気にも悩まされる。鎮痛剤を飲み、じっと痛みが引くのを待った。 労働基準法で定められた生理休暇を取得した経験はない。直属の男性上司に、恥ずかしくて言い出せないからだ。打ち明けても「女性は扱いづらい」などと理不尽に評価が下がるのが怖い。形骸化した〝名ばかり休暇〟だと諦めている。 全従業員は40人ほど。このうち4割程度が女性で、生理休暇を利用した例は聞かない。男性に知られたくないのに加え、突然休むことで同僚に迷惑をかけるとの負い目があるのだろうと推し量る。症状の重さは個人差があり、女性同士でもつらさを理解し合えない場合もある。 ◇ ◇ 生理(月経)はおおむね12歳から50歳までの38年間に450~500回繰り返され、人によっては腹痛や頭痛などを伴う。こうした状況を踏まえ、国は1947(昭和22)年に「生理休暇」を制度化した。
生理休暇は仕事に著しく支障を来す際に請求できる。正規、非正規にかかわらず、日単位だけではなく、半日や時間ごとの取得もできる。会社側が生理休暇を認めなかった場合、30万円以下の罰金の対象となる。 しかし働く女性が増加しているにもかかわらず、取得率は減少している。厚生労働省によると、生理休暇を申請した人の推移は【グラフ】の通り。近年は0・9%となっている。全国労働組合総連合(全労連)などによると、テレワークの普及などが影響しているが、従業員数や職場環境の不十分さなどが主な要因とみられるという。さらに、休暇を取る際の給与保障が定められていないのも要因の一つと指摘する。 ◇ ◇ 経済産業省は生理痛などによる仕事の効率低下で年間約4500億円の経済損失が生じていると試算している。生理痛などで女性が最大限に能力を発揮できない状況があり、会社や事業所の不利益になっているとみられる。