定年後の生活を「満足度100%」にできる人と「不満しかない人」の違いは、意外なところにあった
ヒトとバナナのあいだ
「ヒトと他の生物の遺伝子はどのくらい共通しているか」について調べたこともあります。 ヒトの全ゲノムが解読されたのは二〇〇三年のことでした。他の生物についてもゲノム解読が進み、両者に共通する遺伝子は非常に多いことがわかっています。 たとえば、ヒトとチンパンジーの遺伝子は約九六%が共通するという研究結果があります。ネコ(人間が飼っているアビシニアンでエチオピア原産。最古の品種)は約九〇%、家畜のウシは約八〇%。科学的に難しいことは私にはよくわかりませんが、人間と他の生物が遺伝子的にかなり近いというのは興味深い。なんと、バナナでさえ約六〇%の遺伝子がヒトの遺伝子と共通していると知り、驚きました。 さらに興味深いのは、ヒト同士の遺伝子の共通性です。ヒトゲノムは約三〇億個の塩基対のDNA(デオキシリボ核酸)からなり、そのうち九九・九%は誰でも同じ遺伝情報をもち、人間としての個体差はわずか〇・一%(三〇〇万個)であることが報告されています。九九・九%は同じ遺伝情報なのだから、人間の能力や適性にはほとんど差がない、と言えます。 他方で、〇・一%の差異は、特定の病気にかかりやすいかどうか、ある薬が効きやすいかどうかなどに関係してきます。このわずかな差異に着目し、個人の遺伝情報にあわせたテーラーメイド医療(個別化医療)を行おうという機運が盛んになってきています。ヒトと他の生物の遺伝子はどれくらい同じなのかという疑問が、個別化医療の話にまで発展していく。こんなところにも定年後の「大人の自由研究」の楽しさがあります。 さらに連載記事〈ほとんどの人が老後を「大失敗」するのにはハッキリした原因があった…実は誤解されている「お金よりも大事なもの」〉では、老後の生活を成功させるための秘訣を紹介しています。
丹羽 宇一郎