ソ連と米国のキケンすぎる「チキンレース」に戦慄…「地球は滅亡しかけていた」
核兵器の発射ボタン、実は押されかけていた
米国による海上封鎖が始まると、両者は一触即発の状況になります。そんな中、最悪の事件が起きてしまいます。キューバ上空を偵察飛行していた米軍機がソ連軍の地対空ミサイルで撃墜され、パイロットが死亡したのです。 海上封鎖では核ミサイルの配備を止められないと考えていた米軍の幹部たちは、改めてキューバへの空爆と侵攻に踏み切るようケネディ大統領に強く迫ります。水面下では戦争を回避するための外交交渉が懸命に行われていましたが、タイムリミットは刻一刻と迫っていました。 結局、ギリギリのところで、米国がキューバに侵攻しないと確約するのと引き換えにソ連がキューバから中距離ミサイルを撤去するという合意が成立し、戦争は回避されました。 しかし、後に、核兵器の発射ボタンが押される寸前だったことが判明します。 海上封鎖海域でソ連軍の潜水艦を発見した米軍の駆逐艦が警告のために爆発力の小さな訓練用爆雷5発を海中に投下したところ、潜水艦の艦長が「攻撃を受けた」と誤認して核魚雷で反撃しようとしていたのです。副艦長が冷静に判断して止めていなければ、核戦争が始まっていたところでした。 また、キューバ危機の最中、米軍の中距離核巡航ミサイル「メースB」が配備されていた沖縄でも発射命令が誤って出されていたことが、2015年に米軍関係者の証言で明らかになりました。 核戦争は、起きていてもおかしくなかったのです。 ソ連は、米国のキューバ侵攻の抑止を目的に、同国に中距離ミサイルを配備しました。結果的に米国からキューバ不可侵の確約を得ることができたという点では、目的は達成できたと言えます。しかし、一歩間違えれば米ソ全面核戦争に突入していたかもしれなかったのです。 今後、米国が中距離ミサイルを日本などに配備すれば、キューバ危機と同じように対抗措置の応酬で米中の軍事的緊張が極度に高まり、核戦争という破滅的な事態を招くおそれは十分にあります。