オフェンスだけでは試合に出られないプロの壁(Bリーグ・アルバルク東京 小酒部泰暉・後編)
もっと自分を出していかなければならない6年目
パヴィチェヴィッチヘッドコーチの下で3シーズンを過ごし、ディフェンスの基準値に到達したことでプレータイムは平均20分を超えた。2022-23シーズンからデイニアス・アドマイティスヘッドコーチに代わっても、「今までどおりプレーすることをまずは心がけていました」と小酒部は経験を自信に変えて信頼を勝ち取る。 過去3シーズンはチャンピオンシップ(以下CS)も経験し、いずれもレギュラーシーズン以上のスタッツを残してきた。「CSは負けられないからこそ、より一層気持ちが入ります」とひとつギアを上げる。負けられない、負けたくない、その想いとともに「このメンバーで一緒に戦えなくなってしまうかもしれないという気持ちが一番強いですね」と学生時代から変わらず、常に仲間たちを慮っている。 ほとんど変わらぬ仲間とともに、新たにはじまるA東京での6シーズン目を前に、「もっと自分を出していかなければいけない」と心境の変化を語った。 「昨シーズンの課題として出たオフェンスの積極性を、今シーズンは発揮していきたいです。しっかりディフェンスから入ることは昨シーズンまでと変わらず、それが自分の仕事だと思っています。そこにプラスして、オフェンスでもう少しチームを引っ張っていけるようにしたいです。今はプレータイムもしっかりもらえているので、自分からコミュニケーションを多く取って、チーム全員で勝利につなげていけるようにしたいです」 ディフェンスへの意識が芽生えた神奈川大学からA東京で覚醒し、エースキラーとしての地位を確立。それに加えるオフェンスの積極性に対し、スタッツ目標を聞けば、「得点はあまり気にしていない」と消極的な回答が返ってきた。「ミスを減らし、スタッツに残らないところでがんばること」が、小酒部が求めるオフェンスの積極性である。 「ピックを使ったときに1個目のスクリーンをしっかりかけて、ズレを作ってシュートチャンスを作ること。そこでシュートが決まっても自分にはアシストはつかないですが、そういうまわりを生かすプレーを目指していきたいです」 チームの目標は変わらず、「毎年のように今年こそ優勝するって言ってきましたが…」、これまでのバスケ人生でその喜びを味わったことがない。「1シーズン目はコロナ禍によって途中で終わり、2シーズン目は7位くらい(※東地区6位)でCSに行けず。その後はCSに出ましたが1回戦負け、2回戦負け、1回戦負け。僕が入ってきてからおかしくなっちゃった…」と自虐的に振り返る。今シーズン、A東京のポスターやWEBサイトのキービジュアルの真ん中には小酒部がおり、その期待は大きい。 「今年こそ本当にチャンスがあると思っています。しっかりと優勝を目指して、チームとして戦っていきます。個人としては、もちろんディフェンスでは相手のキープレーヤーとのマッチアップが多くなると思うので、そこはしっかり徹底していきます。昨シーズンのCSのようにオフェンスにも絡んでいきながら、チームのスコアを伸ばして勝利につなげていきたいです。チームとして優勝へ向けてがんばります」 バスケは瞬時に次の行動を決断しなければならない。最善の決断を下しながら、チームのため、仲間たちのために、そしてファンのために勝利へ導く。チームの顔となった小酒部は、これからさらにどんな選手になっていきたいのだろうか? 「何でもできるプレーヤーですかね。(具体的には?)いるじゃないですか、すごい器用な選手って」 笑顔で返すふわっとした理想像は、今後の小酒部のプレーを見ながら答え合わせしていこう。
泉誠一