賃金や就活にも影響はある?“株価の乱高下”大学生が経済部記者にきいてみた
■就職氷河期到来の可能性は?円高も株安も賃金にはマイナス影響
──円高が進むと、賃金に影響が出ますか? 渡邊:企業の特性や、どの程度の円高水準かにもよります。専門家によると、今年度の企業の業績見通しの基準となっている想定為替レートの平均は、だいたい1ドル=144円程度だそうです。この水準を急速に上回って円高が進めば、輸出企業では業績が悪化するリスクが出てきます。業績の悪化は、賃上げにはマイナスの影響となります。 ──株価が下がることも、賃上げにはマイナスですか? 渡邊:専門家に聞くと、株価が下がることで賃上げがしにくくなる可能性はあると指摘しています。株価が好調ということは、市場から見てその企業の評価が高いということなので、その企業が、例えば商品の価格を決めるときも、強気の価格設定がしやすくなります。 結果、商品の価格を上げやすくなり、企業の収益アップにつながる、そして賃金も上げやすくなるという論理です。逆に株価が大きく下がると、企業としては賃金を上げにくくなるという指摘です。 ──就職氷河期到来の可能性はあるのでしょうか? 渡邊:株価の短期的な乱高下がそこまで波及することは、そもそも想定しにくいのではないでしょうか。また、日本社会は人口減少が進んだことで、構造的な人手不足の状態になっています。当面、就職活動も売り手市場が続くのではないか、というのが一般的な見方です。 ──NISAをしている人に影響はありますか? 渡邊:新NISAというのはそもそも、長期間こつこつと積み立てていって、資産を増やそうという制度です。短期間の株価の動きに一喜一憂して、安易に売りに走ってしまうのが、一番良くないと言えるでしょう。 特に新NISAのような積立を前提とした制度を利用するにあたっては、定期的に決まった額の積み立てを続けることが重要とされています。 新NISA制度の導入を主導した金融庁の井藤英樹長官も、今月の日本テレビのインタビューでこのように説明しています。 「昨今、相場の変動等もありますけれども、『長期』・『積立』・『分散』投資とありますので、投資と向き合う際に一定程度長い目 線を持ってぜひ取り組んで頂ければと思います。金融庁では、かねて『長期』・『積立』・『分散』投資というのが家計の資産形成にはより良い、適当なのではないだろうかというふうに申し上げてきたところであります。長い時間軸をとってみると、相場が高い時もあれば低い時もある。そうした中で相場の短期的な変動に一喜一憂するということではなく、コツコツと積立投資に向き合っていくことが資産形成には大事なポイントと思います。」 実際、5日の株価暴落時には、損失がさらに広がるのを防ぐため、損が出ていても株を売る「損切り」をする個人投資家の方もいたようですが、翌6日に株価が2000円以上回復したことで、後悔する声も聞かれました。株価は暴落から1週間後の13日に、暴落前の水準をほぼ回復しています。こうした状況を見ても、短期的な株価の動きに一喜一憂してしまうリスクが分かると思います。一方で、投資というのは、常に損をする、元本割れするリスクがあるというのを理解することも重要です。大前提として、投資をやるかやらないかも個人の自由。投資に関する基礎知識をしっかり学んだ上で投資を行うか判断し、行う場合は、「株価が下がることもあり得る」という意識を持ちながら、長期・積立・分散という基本を踏まえて取り組むことが重要ではないかと思います。