「後期高齢者」という酷い呼び名 “レッテル張り”が日本の健康長寿を阻んでいる
「余命幾ばくもない」と聞こえる
実際、この内閣府による意識調査では、「気持ちをなるべく明るく持つ」という答えた人は41.3%と少なく、男女別にみると、女性は48.6%に達するのに対し、男性は33.3%にすぎない。また、「なるべく外出する」にいたっては、全体で26.4%とかなり少ない。 この意識調査は、じつは国際比較調査にもなっているのだが、上記の項目に気をつけている日本人は、他国とくらべてかなり少ない。60歳以上の単身世帯の男女に尋ねた結果をみると、「気持ちをなるべく明るく持つ」と答えた人は、男性の場合、日本は28.8%なのに対し、スウェーデンは48.0%、ドイツは72.7%、アメリカでは84.7%に達している。女性は日本でも59.6%だが、ドイツの74.8%、アメリカの89.3%にくらべると低い。 「なるべく外出する」と答えた人も、日本では男性が31.5%なのに対し、スウェーデンは45.1%、アメリカは57.6%になる。女性も日本は30.3%だが、スウェーデンは56.5%、アメリカは66.3%である。 ただでさえ、日本人は「気持ちをなるべく前向きに持つ」ことの重要性を認識している人が少ないようだ。健康寿命を延ばすためには、高齢者にその点の意識改革をうながすことが必要に思われるが、「後期高齢者」というレッテルを張られることで、その意識がしぼんでしまっているという現実があるとしたら、どうだろうか。 昨年、満75歳になったある男性の声を紹介する。 「後期高齢者医療制度が導入されたのは、私が還暦を迎え、勤めていた会社を定年退職したころだったと記憶しています。“後期”だなんて終わりに近い呼び名をつけていいのだろうかという疑問はもちましたが、その時点では、私にはまだ無縁の話だという認識でした。そして、空いた時間を利用して、クラシック音楽のコンサートに頻繁に通ったり、内外に旅行したりと、充実した日々をすごす夢をいだいていました。実際、それなりに充実した日をすごしてきたつもりですが、昨年来、趣味に張り切っていると、妻から“あなたももう後期高齢者なんだから”とたしなめられ、昔の仲間に会っても“俺たちも後期高齢者だからな”という話になります。この“後期”という言葉、自分が該当するようになって実感しますが、“終わりに近い”とか“余命幾ばくもない”という意味にしか聞こえません。こんなふうに呼ばれていたら、元気なんて出ないし、前向きな気持ちになりたくたってなれませんよ」