京都の宇治に出現した「任天堂ミュージアム」の全貌、なぜ今、テーマパークとは異なる“展示施設”を作ったのか
宮本氏は、任天堂の商品開発におけるコンセプトを、ミュージアムの展示を通じて一般消費者にも伝えていきたいという。「ゲームの競合や先端技術とは関係ないところにある会社だと思ってもらえるのが大事。(新しい技術を)いちばん適正な売り時が来たときに商品化している歴史が見てもらえると思う」。 ■スイッチ後継機でも問われる“らしさ” この任天堂らしさを維持できるかどうか、1つの試金石となるのが、今期中にアナウンスするとしているスイッチの後継機だろう。
2017年3月に発売したスイッチは、テレビにつなぐ据え置き型としても、本体を持ち出して携帯型ゲーム機としても遊べる。多様な遊び方を可能にしたことで大ヒットとなり、今年6月末までの販売台数は1億4000万以上と、歴代最多のニンテンドーDS(1億5402万台)を上回る可能性がある。 スイッチのヒットは、近年の任天堂の成長を支えてきた。2024年3月期の全社業績は売上高1兆6718億円(前期比4.4%増)、営業利益5289億円(同4.9%増)と、2017年3月期から売上高は3.4倍、営業利益は18倍に伸びた。後継機の投入によって、さらなる高成長を導けるかが試される。
中興の祖とされる山内溥氏は「この業界には天国と地獄しかない」とよく語っていたという。新しい遊びを提案し続けることがアイデンティティであると、ミュージアムで改めて示した任天堂。発表が近づく後継機でもその精神が込められているのか、期待が高まる。
田中 理瑛 :東洋経済 記者