「『復興』という言葉。何を指すのだろう?」 佐藤浩市さん、3.11原発事故描いた映画主演
【佐藤】 事故から9年。約10年間の時間が経った中で、「もう帰れますよ」って門戸を開いたところで、戻れないですよ、みなさん。戻りたいという気持ちが(あっても)、いつしか別の所に生活が根ざしてしまったならば、今度はそっちからこっちに帰って来られなくなる。この9年というスパンが短かったのか、長かったのか。それを含めてみんな知るべきですよね。(福島県)富岡町なんて、十分に帰って来られる。病院も学校も全部OK。だけど、戻って来られない。これが現実ですよね。
Q:事故自体は9年前ですが、まだ終わっていない問題です。佐藤さんは、出演されるに際しての迷いはありましたか? またやるとなったときにどう演じようと思いましたか?
【佐藤】 非常に、題材として危険なものを持っています、正直。そこで、どちらかのプロパガンダになるような形には絶対にしたくないと監督たちがおっしゃっていた。現場の最前線の、現地雇用の人たちに対してスポットを当てたいと。じゃあその中で何が起こったのか。 そこに残るしかない。残ってやれることがあるならば、残るんだっていう、そういう人たちの思いですよね。Fukushima 50は外国の人たちからは驚きをもって捉えられた部分があります。「なんでそんなところに、命を投資できるんだ。おかしいんじゃないか」という見方も諸外国の人からはあったかもしれない。でも、そこにいて自分たちがいることで何かができるならいよう、という気持ちって、あったと思うんですよね。なんかそこが伝わってほしいなっていう思いですね。
Q:若松監督はいかがでしょうか。まだ終わっていない問題について、このタイミングで世に問う意義はどういうところでしょうか?
【若松】 5年かかってやっと公開することができました。2020年に「復興オリンピック」とも言われるイベントが行われる。現実は復興していると言えるかどうかという中で、世界の人たちが(日本に)集まります。
この映画をどうやって終わらせるんだろうかっていったときに、「やっぱりまだまだ復興できていないよね」って。こんな美しい桜が咲くのに、誰も見る人がいなくて、苦しいよねって。それは結論とも言えない。「ing」(現在進行形)ですよね。まだ続くよねということの気持ちを込めてエンディングのシーンを作ったんです。美しい桜のシーンをどう観てもらえるか。(観客の)それぞれの解釈で良いと思っています。