【解説】高騰するガス・電気代 中東情勢でさらなる不安 日本の資源エネルギー戦略は…
■政権交代 新規のガス田開発…不透明に
―――どういうことですか? オーストラリアは去年5月に政権交代があり、およそ10年ぶりの労働党政権に変わりました。脱炭素、グリーン戦略により厳しく取り組む政策を打ち出しています。 まず日本に影響しそうなのがセーフガードメカニズム、CO2などの排出上限を設定する制度の改正です。上限がどんどん下がる厳しいものとなりました。 これは日本企業が関わる新規のガス田開発やさらに、すでに投資が決定しているプロジェクトにもさかのぼって厳しいルールを適用するようです。これで日本企業などが予定していたガス田開発が遅れるかもしれない。詳しい条件がわからないので新規のガス田開発が不透明になっているし、今後続けて投資できるか不安が出ています。
■日豪 LNGのほか「水素」でも協力
―――開発が遅れると、エネルギー価格に影響しますね? 先週、西村経済産業大臣がオーストラリアに行き、経済委員会の会議で演説すると共に、大臣同士の会談も行われました。労働党政権での先行き不透明感を解消すべく、LNGや石炭等の資源の安定供給と信頼できる投資環境を確保することや、水素・アンモニアなど脱炭素化でも協力していくという共同声明が出されました。 ―――LNGのほか水素などでも協力していくんですね。 世界で期待されるエネルギーの水素について、オーストラリアは日本との新たなパートナーシップを求めているといいます。日本としてはLNGなどのエネルギー確保で安心したい…ということで、やりとりの最中です。
■カーボンニュートラル 日本はどう実現?
―――日本はエネルギー資源がない国。政府はどうやって資源燃料を確保しカーボンニュートラルを実現しようとしているんですか? <1>「資源調達の多様化」政府はこれまでも調達先を多様な国に広げようとしてきました。原油は一時、中東頼みから比率が下がりましたが、その後また中東比率が上がっています。資源の多様化もして、LNGなど他の資源の比率を増やし、どこかで紛争などがあっても安定調達できるように努力しています。 <2>「水素などで世界市場獲得」水素・アンモニアなどは次のエネルギー源として期待されています。まだ価格が高いんですが、日本は技術開発などで先行し普及させて、世界の市場を獲得したいとねらっています。 <3>「新技術で資源国と関係強化」カーボンニュートラルでは先進的な技術の支援で資源国と良い関係を作ろうとしています。例えば、CCS=削減しきれない二酸化炭素を地中に埋めるものですが、世界が注目し始めている中、技術や埋める場所の確保でリードしたいんです。 ―――二酸化炭素を地中に埋めようとしているんですね。資源の確保とカーボンニュートラル実現に私達にできることはありますか? まずは資源エネルギーを大事につかう。がんばって節電してると思いますが、一人暮らしや少人数家庭が増えていることもあって家庭部門での電力消費全体は減ってないんです。 古い家電や温水器は買い換えるとか、住宅の設備を思い切って省エネ型にできるほうがいい。今、ガソリン価格・電気料金に政府の補助が出ていますが、本来はもっと高いものだと理解して使うことも大切。いつまでも補助は続けられません。エネルギー資源がない日本は戦略を間違えると、ガス・電気代が高くなってしまうだけでなく、財政や企業の成長も苦しくなります。 エネルギー戦略にしっかり注目していきたいと思います。