《認知症介護の心得》“失敗しない施設選び”6つのポイント「声のかけ方」「展示物」からわかる「いい施設・ダメな施設」
家族を施設に入れてからやるべきこと
「施設に入れたら、あとは全部おまかせ」と考えて、罪悪感を覚える人もいるというが、川畑さんは「家族が入居したあとにも、あなたにできること、しなければいけないことがたくさんある」と話す。 施設での面会は入居している家族だけでなく、担当している職員と会う機会でもあり、そこで本人の様子や健康状態を確認することになる。特に、認知症が進行して本人とのやりとりがうまくいかない場合は、職員とのコミュニケーションが重要だ。 ◆認知症の人の情報を伝える まず、職員に、口ぐせや趣味、興味や関心ごと、習慣、特技、大切にしている考え方といった本人の情報を積極的に伝えること。 「こういった、本人を構成する心の部分や、歩んできた歴史を伝えると、『あ、こういう人なんだ』とわかります」 人としての興味がわいて親近感をもつことができるだけでなく、認知症が進行して、一見理解が難しい言動が増えたときに、なぜそうするのかを知るヒントにもなるからだ。朝ごはんをどうしても食べてくれない人が、実はずっとパン食だったとわかり、パンを出したところ改善したというケースもあったという。 ◆職員に家族との関係を教える その際に、本人と家族の関係を伝えておくことが意外と大切だと川畑さんは言う。例えば、本人が一番頼りにしているのが、家族の中でも誰か、といったことだ。 「その情報があれば『長男の幸一さんから、今日はお風呂に入って、リハビリを頑張ってきてほしいと頼まれているんですよ』なんて具合に、職員のかたが、関係の良好な人の名前を水戸黄門の印籠のように使えるわけです」 ◆教えてくれたのは:理学療法士・川畑智さん かわばた・さとし。理学療法士。熊本県認知症予防プログラム開発者。株式会社Re学代表。1979年、宮崎県生まれ。理学療法士として、病院や施設で急性期・回復期・維持期のリハビリに従事し、水俣病被害地域における介護予防事業(環境省事業)や、熊本県認知症予防モデル事業プログラムの開発を行う。2015年に株式会社Re学を設立し、熊本県を拠点に「脳いきいき事業」を展開。さらに、脳活性化ツールの開発に携わったり、講演活動を行ったりしているほか、メディア出演や著作も多数。 ◆監修:脳心外科医・内野勝行さん うちの・かつゆき。脳神経内科医。医療法人社団天照会理事長。金町駅前脳神経内科院長。帝京大学医学部医学科卒業後、都内の神経内科外来や千葉県の療養型病院を経て、現在は金町駅前脳神経内科の院長を務める。脳神経を専門として、これまで約1万人の患者を診てきた経験をもとに、薬物治療だけでなく、栄養指導や介護環境整備、家族のサポートなどを踏まえた積極的な認知症治療を行っている。著書に『1日1杯 脳のおそうじスープ』(アスコム)など。