《認知症介護の心得》“失敗しない施設選び”6つのポイント「声のかけ方」「展示物」からわかる「いい施設・ダメな施設」
施設選びを間違えないための6つのポイント
いざ、家族を施設に入居させる決断をしたときに、川畑さんが「必ず直面する問題」だと話すのが、施設の選び方だ。 ◆施設には必ず足を運んでチェックする 大切な家族を預ける場所とあって、調べれば調べるほど、どこにすればいいのかわからなくなってしまうものだという。そこで、川畑さんがチェックするべきだという6つのポイントを教えてもらった。 「まず大前提として、施設を選ぶときは、必ず見学してください。ホームページやパンフレットに載っている情報だけでなく、その場に行ってみないとわからない『雰囲気』や、聞かなければわからない話が必ずあります」 ◆施設見学で見るべき6つのポイント 1つ目は、職員が来客者だけでなく、すれ違う同僚や入居者にちゃんと「あいさつをしているかどうか」。無言で通り過ぎていく職員が多いとしたら、忙しすぎて施設全体に余裕がない可能性がある。 2つ目は、「職員から入居者への声のかけ方」だ。乱暴な言葉使いは論外として、なれなれしすぎるのも、入居者と適切な距離感がとれていないことが考えられる。 「『ちゃん付け』や『あだ名』は人生の先輩への振る舞いとは思えませんし、間違いや失敗に対して“あはは、かわいい”なんて高齢者をペット扱いされるのもごめんです」と川畑さん。一般的な常識で許容できる範囲か、見ておく必要がある。 3つ目は、「施設のスケジュール」。これは、適度な活動が組み込まれているか、活動中に集中しているかといって放置していないかといったことだ。見学の時間帯を変えて何度か施設を訪れたり、別のフロアを見せてもらったり、説明してくれる職員を変えてもらったり、「同じ施設でも違う側面が見えるようにするといいですね」と川畑さんは言う。 4つ目は、「複数の職員へヒアリング」すること。同じ質問をしたときに、同じ答えが返ってくるかどうかがチェックするポイントになる。 「例えば、活動のプログラムを尋ねたときに、ある職員は『みなさん毎日、集団での体操やレクリエーションを頑張っていますよ』と答えたのに、別の職員は『興味がある、またはできる人だけ体操やレクをやっています』と答えたら、これだけでも話が違ってくるわけです」 5つ目は、「掲示物や展示物の様子」から、細部にまで気が回っているかの確認だ。古いポスターやイベントのチラシがそのままになっている、展示物の季節感がおかしかったり、ほこりをかぶっていたりする、休憩室で流れるビデオが毎回同じ…といったことだ。介護の業務に追われ、生活の豊かさへの余裕がない可能性があるといえる。 6つ目は、「1人ひとりに合わせた介護」ができているかどうか。例えば、おむつ交換が同じ時間に一斉に行われている場合、ある時間だけ便や尿のニオイが漂っている場合があるという。これは介護される側に合わせた時間の流れではなく、「職員主体の時間の流れになってしまっている」ということだと川畑さん。 「ほかにも、廊下にやけに人が出ているなと思ったら、一斉に起床させて、一斉に歯みがきをさせていると言う施設も少なくありません。限られた見学の時間では難しいかもしれませんが、介護の主体が職員になってしまっていないかも、できる限りチェックしてみましょう」 これらのポイントは、入居者だけでなく、職員にとってもいい職場かどうかということに重なる。「介護する人に余裕がなければ、お互いに曇り空。これは、家でも施設でも、同じことなんです」と川畑さんはまとめる。