食後に眠くなるのはなぜ?予防法は?眠気と血糖値の関係を管理栄養士が解説
昼食を摂ると眠くなり、仕事に集中できなくなることはありませんか?もしかすると、あなたの眠気は血糖値と関係しているかもしれません。この記事では、食後に眠くなる理由を血糖値との関連から管理栄養士が解説します。眠気を予防する方法も紹介するので、食後から集中して仕事に取り組みたい方はぜひ最後まで読んでください。 〈写真〉食後に眠くなるのはなぜ?予防法は? ■食後の眠気は「血糖値スパイク」が原因かも? 食後に眠くなるのは、自律神経の働きや覚醒ホルモンの分泌低下など、さまざまな説が考えられています。なかでも血糖値スパイクは、有力な原因のひとつとされています。 血糖値スパイクとは、食後に起こる血糖値の乱高下のことです。食事を摂って血糖値が上昇すると、血糖値を下げるインスリンというホルモンが膵臓(すいぞう)から分泌されて、血糖値は正常値に戻ります。ところが、インスリンの分泌タイミングがずれたり分泌量が減少したりすると、血糖値が正常な範囲を超えて跳ね上がってしまうのです。 急上昇した血糖値を下げるためにインスリンが大量に分泌されると、今度は血糖値が下がり過ぎて低血糖状態になります。血糖は脳のエネルギー源でもあるので、低血糖になると脳に供給するエネルギーが不足してしまいます。その結果、眠気が引き起こされるのです。 血糖値スパイクの症状は、眠気だけではありません。食後にだるくて動けなくなる、頭痛がする、イライラする、といった症状も血糖値スパイクが原因である可能性があります。 ■血糖値スパイクが続くとどうなる? 血糖値スパイクが起こるのは、膵臓の働きが衰えて、インスリンを正常に分泌できなくなっているためです。血糖値スパイクが続くと膵臓がさらに疲弊して、糖尿病を発症しやすくなるでしょう。 また、血糖値の乱高下は血管へダメージを与えます。傷ついて固く分厚くなった血管は動脈硬化へ進行し、心筋梗塞や狭心症、脳卒中などの重大な疾患を引き起こす可能性があります。 実は、血糖値スパイクは一般的な健康診断では見抜けません。血糖値スパイクが起こっても時間が経つと正常値に戻るため、健康診断の検査では判断できないのです。気づいたときには糖尿病になっていた、というケースもあるので、気になる症状がある方は早めに病院を受診しましょう。 ■血糖値スパイクを防ぎ、眠気を予防するには 血糖値スパイクは、次のような方法で予防できます。 ・炭水化物の単品だけの食事にしない ・食物繊維やたんぱく質を含むおかずから食べる ・ゆっくり食べる ・食事を食べ過ぎない ・食後に軽い運動をする ・食事を抜かない 糖質が多く含まれるのはご飯やパン、麺類などの炭水化物です。そのためラーメンやうどん、丼もの、パンだけの食事では血糖値が上がりやすくなります。 食物繊維やたんぱく質には、糖質の吸収を遅らせる作用があります。ご飯やパン、麺類の主食の前に食物繊維やたんぱく質を含むおかずを食べると、血糖値の急上昇を防げるでしょう。食物繊維は野菜・海藻・きのこに、たんぱく質は肉・魚・卵・大豆製品・乳製品に多く含まれています。 食事をかき込むように一気に食べると、空っぽの胃腸へ糖質が流れ込み、血糖値が急上昇します。また、食事量が多過ぎても血糖値は上がりやすくなるでしょう。血糖値スパイクを防ぐために食事はゆっくりよく噛んで食べて、腹八分目にとどめてください。 食後にウォーキングのような軽い運動をすると、体を動かすエネルギーに血糖が使われて、血糖値の上昇が抑えられます。また、運動にはインスリンの働きを高める効果も期待できます。 食事を抜くと、次の食事で血糖値が急上昇しやすくなるため注意が必要です。朝食を抜きがちな方は、ヨーグルトやバナナだけでもよいので、朝に食べ物をおなかに入れる習慣を付けましょう。 血糖値スパイクに起因する食後の眠気は、集中力を低下させるだけではなく、糖尿病や動脈硬化などを引き起こすおそれがあります。食事や生活習慣を見直して、血糖値スパイクを予防しましょう。 【参考文献】 糖尿病ネットワーク「血糖値スパイクは『隠れ糖尿病』 朝食を工夫して食後に血糖値を上げない」 全国健康保険協会 北海道薬剤師会「食後に眠気がでるのはなぜ?」 ライター/いしもとめぐみ(管理栄養士)
いしもとめぐみ