国民の信頼回復に向けた政治改革は進むか
進まなかった政治改革
1989年5月に、自民党は政治改革大綱をまとめた。そこでは、国民の政治不信の中心にある問題として、①政治家個々人の倫理性の欠如、②多額の政治資金とその不透明さ、③不合理な議員定数および選挙制度、④わかりにくく非能率的な国会審議、⑤派閥偏重など硬直した党運営など、を挙げたうえで、特に政治と金の問題は政治不信の最大の元凶である、と結論付けた。 指摘された5つの問題点のうち、実際に改革が目立って進んだのは選挙制度改革だけだ。大綱では、当時の中選挙区制の問題点について、「政党本位でなく個人中心の選挙となりがち」、「日常政治活動や選挙運動の重点を政策以外におく傾向に拍車をかけ、利益誘導の政治や、後援会組織の維持と膨大な有権者への手当のため、多額の金がかかる選挙を生む原因となった」、「政治腐敗の素地をまねく」などを指摘していた。1994年には、細川内閣のもとで公職選挙法が改正され、「小選挙区比例代表並立制」が導入されたのである。 しかし、その結果、党執行部に権力が集中して衆院議員が小粒となる「チルドレン政治」につながったとの指摘や、選挙区の敗者が比例代表で復活当選することに対する不満なども指摘されている。他方、政治制度改革が、金のかかる選挙を抜本的に変えることはなかった。 また、大綱では、政治資金収入は公正明朗な資金によるべき、との考えの下で「国会議員への公的援助の拡大と国庫補助を中心とした政党法の検討」が謳われた。そのもとで、1994年には政党助成法が成立し、国民1人当たり250円の「政党交付金」を負担する制度となった。 この政治改革で導入された政党交付金は、税金が原資となっている。今回の疑惑を受けて、パーティ券収入と政党交付金の「二重取り」との批判も聞かれる。 公的支援を拡大する代わりに将来的に企業・団体による寄付を禁止することが当時は議論されたが、現状でもなお、政党や政党支部に対する企業・団体寄付は可能であり、寄付に基づく企業・団体に対する利益誘導の政治の温床は残されままだ。