中国人、ロシア人と信頼関係を築くには?伊藤忠幹部が20代で学んだこと
世界的な原料高騰が続く中、追い風を受ける日本の商社業界。中でも伊藤忠商事は財閥系以外の総合商社として時価総額を大きく伸ばしている。なぜ、伊藤忠は圧倒的な成長を遂げているのか。その答えの一つは、創業以来受け継がれてきた「商人」としての心構えにある。 【全画像をみる】中国人、ロシア人と信頼関係を築くには?伊藤忠幹部が20代で学んだこと 本連載では、岡藤正広CEOをはじめ経営陣に受け継がれる「商人の言葉」を紐解きながら、伊藤忠商事がいかにして「商人」としての精神を現代に蘇らせ、新たな価値を生み出しているのかを深掘りしていく。 連載第9回は、前回に続き石井敬太社長の言葉と、CAO(Chief Administrative Officer)の小林文彦副社長の言葉。
酒は飲んで騒ぐためのものではない
伊藤忠に入り化学品の担当となった石井はラグビーで鍛えた体力で酒を飲んだ。目的は仕事を通して相手と親しくなるためだ。 交際費などほとんどなかったが、積極的に自分から誘った。また、相手から誘われたら、必ず出かけていった。 「なぜ酒席を持つかといえば、人と人の距離を縮めるため。酒に酔うために店へ行くわけじゃないんです。取引先、関係者との距離を縮めることで、情報が入りやすくなる。これは日本だけでなく、中国でも韓国でも台湾でもどこでも同じ。お酒を介して距離を縮めることによって仕事がスムーズにいく。 若くてほとんど交際費がなかった頃は新橋界隈の居酒屋、小料理屋へ行きました。誘ったこともあれば誘われて飲んだこともあります。どちらかといえば誘われたことが多かったかもしれません。 誘われて飲んだ後、僕は必ずひとりでその店へ行きました。店のご主人、女将さんにお礼を言うためにです。そうすれば、また次にその店を使う時、こちらのためにいろいろ頼みごとを聞いてもらえる。 それに、『伊藤忠の石井さんはいい人。いい人紹介してくれてありがとう』みたいなことを店の女将が取引先に伝えたら、それでいい関係になります。 お店では酒を飲んでぐだぐだになって、つぶれちゃだめです。相手にも店にも迷惑をかけるから。 ……ただ、僕自身がつぶれた経験がないかといえばそんなことはない。 中国の人が相手でしたが、中国人と飲む時は一度はつぶれたほうがいいんじゃないかな。中国へ行って『もうこれでお酒は結構です』と言うと、失礼な態度になる。最大限のもてなしが彼らの流儀ですから、合わせないといけない。 とにかく食べきれない量の料理が出てきます。酒も乾杯の連続です。一度は、つぶれるくらいは飲まないと……」 飲んでつぶれたのは1980年代、中国の東北部、黒竜江省に出張に出かけた時のことだった。