満期でも元本割れする「かんぽの学資保険」 NISAで代替できるのに
太陽生命の個人年金保険のほうがマシ
学資保険の満期は、通常、子どもが17歳や18歳になる時期に設定する。そこで「17~18年で、お金が増えれば何でもありではないか?」と思い、「個人年金保険」と比べてみた。太陽生命(*)の「スマ保険」のサイトで、個人年金保険の返戻率を試算すると、30歳男性が48歳まで保険料を積み立て、年金を一括受け取りする場合、100.2%だった。 つまり、18年かけて進学資金を準備する場合、かんぽの学資保険より、太陽生命の個人年金保険を利用するほうが、まだマシなのだ。 何しろ、かんぽの学資保険は元本割れなのだから。 身も蓋もない話かもしれない。それでも、この話に何か学びがあるとしたら、「お金の使い道」によって、金融商品を選ぶ必要はない、ということではないか。子どもの進学資金は学資保険で貯めなくていけない、という決まりはない。老後資金も個人年金保険で貯めなくてはいけない、というわけではない。 保険の場合、円建ての貯蓄商品の保険料は、主に長期の国債で運用される。外貨建て保険なら外国債券、変額保険なら株式や債券を中心に運用されているわけだ。したがって、保険商品を利用した貯蓄や運用は、保険会社に仲介料を払い、国内外の債券や株式を買ってもらうのと同じだ、と理解したらいい。 保険契約で、当たり前のように一定期間の元本割れが生じるのは、他の金融商品より手数料等の諸費用が高いからだ。 * 正式な社名は、太陽生命保険株式会社 ●ソニー生命の学資保険なら、さらにマシだけど 学資保険に力を入れているソニー生命(*1)の場合、どうだろう。30歳男性が18年間、月払いでお金を積んで、一括で学資金を受け取る学資保険のプランだと、返戻率は103.1%。かんぽの学資保険はもちろん、太陽生命の個人年金保険より高い。それでも、契約後10年間は、いつ解約しても元本割れが生じる。また元本を回復した後、満期までの返戻率はずっと100%だ(*2)。 つまり、元本割れ期間が10年ある上に、満期までお金は1円も増えない。満期時の返戻率と比べたら「ハイリスク・ローリターン」だと感じる。物価が上昇する可能性なども考えると、「中途解約リスクが高く、最終的なリターンも実質的にはマイナス」と評価できるだろう。 筆者の保険相談でも、今年に入り、20~40代のお客様から「学資保険は検討しない。NISA(少額投資非課税制度)の枠が大きくなったから、日常的に使うお金と非常時に備えるお金は、動かしやすい預金口座に置き、ほかのお金は、極力、諸費用が安い投資信託で運用したい」と聞く機会が増えている。 筆者もそれでいいと思う。そもそも「生まれたばかりのわが子が大学に進学するはずの18年後」など、特定の時期やイベントに合わせて、計ったようにお金を増やせる方法はないと考えるからだ。 その代わり、お金はどんな用途にも使える。だから、中長期的にお金がかかるイベントがあるなら、まずは中長期的にお金が増えやすいと思える手段を探すことだろう。そう思える手段が見つかったなら、家計が許す範囲内で、そこにできるだけ多くのお金を積み、必要に応じて取り崩したらいいと思うのだ。 「子どもが生まれたら学資保険」という判断は、厳しい言い方をすると安易で短絡的ではないだろうか。 *1.正式な社名は、ソニー生命保険株式会社 *2.ソニー生命の学資保険の元本割れ期間と、その後の返戻率については、ソニー生命のコールセンターに問い合わせて確認した
後田 亨