満期でも元本割れする「かんぽの学資保険」 NISAで代替できるのに
『この保険、解約してもいいですか?』(日経BP)を刊行。有料の保険相談を長年、続けてきた後田亨氏が「学資保険」の要否を考察する。 【関連画像】かんぽ保険の「学資保険」の戻り率(子どもが18歳のときに保険料を払い終えるタイプ) 「この契約は、満期がきても元本割れしますけど……」 「そうなんです。意味がないですよね。子どもが生まれたとき、親が『孫のために』と、郵便局で契約しました。保険料も親が払っているので、そのままにしています」 保険相談にいらした方に、ご加入中の「学資保険」について、お尋ねした際のやり取りだ。 ご存じの方が多いと思うが、学資保険は、子どもの教育資金(学資)を貯めることを目的とする保険だ。毎月一定額の保険料を払い続けると、子どもの大学進学の時期などに、まとまったお金(学資金)を受け取れる。親などの契約者が死亡したときに保険料の支払いが免除されるといった保障機能もあるが、主な目的は「貯蓄」にあり、保険業界では「貯蓄商品」と分類されている。 ただし、満期になる前に解約してしまうと多くの場合、払い戻しされる「解約返戻金」は、払い込んだ保険料の総額より少なくなってしまう。つまり「元本割れ」である。 それどころか、満期を無事に迎えても元本割れする商品もあり、先ほどの相談者のケースがまさにそうだった。 かんぽ生命(*)の学資保険では、よくあることだ。それでも「かんぽの学資保険」の人気は高いと感じる。1971年に誕生した「日本で最初の学資保険」(同社サイト)だからだろうか。 * 正式な社名は、株式会社かんぽ生命保険
「かんぽの学資保険」は、お得になったか?
かんぽ生命のサイトで「学資保険」のページにアクセスすると「2023年4月に戻り率が良くなりました!」という文言を確認できる。 実際のところ、どうなのだろう? 「戻り率」というのは、満期などに受け取るお金(学資保険の場合は「学資金」)を払い込んだ保険料の総額で割った数字だ。返戻率(へんれいりつ)と呼ぶこともある。 かんぽ生命のサイトには「戻り率101.2%!」という記載もある。 ここで紹介されているのは、30歳男性が、子どもが0歳のときに加入し、総額197万5200円の保険料を10年で払い終わり、子どもが18歳のときに200万円の学資金を受け取る例だ。確かに、戻り率は101.2%だ(小数第2位以下切り捨て)。 しかし、本当に元本割れしないのか。 ●やっぱり「かんぽ」は元本割れする かんぽの学資保険の場合、保険料の払い方に複数の選択肢があり、学資金の受け取り方にも3つのコースがある。戻り率が101.2%になるのは、保険料を「10歳」のときに払い終えるタイプで「『大学入学時』の学資金準備コース」を選んだ場合だ。 同社のサイトにある「お見積りシミュレーション」では、保険料を「18歳」のときに払い終えるタイプ(「18歳」まで払い続けるタイプ)も選択できる。そこで、このタイプを選んだ場合の戻り率を計算すると、次の表に示すように、いずれのコースでも元本割れする。 なぜ、元本割れする貯蓄商品が売れるのだろうか? 正直、筆者にはわからない。 「学資保険」という商品名がいい、とは思う。進学資金準備に最適、という感じがする。ほかに考えられる理由としては「同調圧力」だろうか。親族や友人から「皆、入っているから」と言われて、学資保険に加入している人は珍しくない。 それにしても、視野が狭くなっているのではないか。