列車の“魅力度”なら負けていない!栃木県ご当地鉄道事情 新幹線に東武特急、どれに乗っていくか迷う?
「リバティ」に「スペーシア X」と、看板級の特急が乗り入れ、加えて蒸気機関車(SL)まで走っているのだから、路線そのものが観光化。いまや、日光の主役を担っているといっても過言ではない。 さらに、東武日光線下今市駅からは北に向かって東武鬼怒川線。鬼怒川温泉への行楽輸送を主たる役割とし、終点の新藤原駅では野岩鉄道と接続する。野岩鉄道は鬼怒川上流の山の中を北上し、福島県に入って最初の会津高原尾瀬口駅で会津鉄道と結ぶ。
■福島県内まで走る私鉄特急 東武特急「リバティ会津」は、浅草から発して野岩鉄道・会津鉄道に直通、会津田島駅までを結んでいる。途中で群馬県もかすめているから、実に5都県を跨ぐロングラン。これ以上に多くの都道府県を股にかける私鉄特急はほかにない。 東武日光線は、日光にやってくるまでに新栃木駅で東武宇都宮線を分けており、こちらは東武宇都宮駅が終着のターミナル。東武宇都宮駅とJR宇都宮駅は直線距離で約1.5km離れている。ただ、古くからの宇都宮の中心市街地に近いのは東武のほう。JRと東武、ふたつの宇都宮駅はひっきりなしに運転されている路線バスで結ばれている。
JR宇都宮駅の東口には、2023年に路面電車の宇都宮ライトレールが開業したばかり。なかなか好調のようで、今後は西口への延伸計画が進められることになる。まだ構想段階だが、東武宇都宮線との直通もテーマになっているとか。実現するのかどうか、果たして……。 栃木県内を走る東武の路線はほかにもあって、その1つが伊勢崎線の館林駅から分かれる佐野線だ。途中、佐野駅でJR両毛線と交わり、さらに北に進んで葛生駅で終点を迎える。かつては葛生駅から先に貨物線が続き、石灰石やセメントの輸送を行う産業路線の側面も持っていた。
【写真の続き】まだ乗ったことのない車両が待っている……栃木県内を走る鉄道路線 いずれにしても、栃木県内の鉄道ネットワークは南北に貫く東北新幹線・東北本線を軸としたJR各線、そして日光線・鬼怒川線が背骨の東武鉄道各線によって支えられているといっていい。 ■両毛線でつながる路線 JR各線と東武各線、接続しているのが両毛線ばかりというのもなかなか趣深いものがある。互いにつかず離れず、絶妙な関係性で補い合う関係といったところか。おかげで、栃木県内、こと平野部に限れば鉄道空白地帯の少ない実に恵まれたネットワークが形成されているのである。
さて、ならば日光観光、どうやって行くべきか。東武沿線の人なら東武特急一択だが、そうでない人は、やっぱり、新宿駅を発着するJR・東武直通特急だろうか。意外とこれもまた、侮れない実力を持っている。
鼠入 昌史 :ライター