台湾、第2のTSMC目指すベンチャーが群雄割拠
台湾ではこうした好循環をなかなか作れずにいました。今、変化が起きたのは前述したスタートアップIPOの成功例が生まれたことに加え、法律と制度の改正があります。 もともと台湾のベンチャー投資法制は保守的で窮屈なものでしたが、2018年の法改正によって大きく変わります。特に重要だったのが、評価額の弾力的な算定が認められたことです。改正前は株式の額面金額は変更できませんでした。創業者も、企業規模が拡大した後に参加した投資家も同じ条件で株式を取得することになります。
改正後は他国と同様に無額面株式が発行できるようになったため、創業初期に株式を取得した創業者は資金調達による株式希薄化を恐れずに済みます。資金供与した投資家もIPO前に株式を譲渡する形式でのイグジットも可能です。こうして投資家たちの台湾ベンチャーへの意欲が大きく高まりました。 さらに大きなポイントはベンチャー向けのマーケットの新設です。従来は台湾市場でのIPOには3年連続で黒字であることが要件でした。難度の高い事業に取り組んでいる企業にとっては厳しいハードルです。
台湾証券取引所は2023年に台湾イノベーションボード(TIB)を新設、上場要件を緩和しました。黒字化要件を満たしていなくても、売り上げや運営資金といった別の指標で判断されるようになったのです。これによって利益を出せるようになるまで時間がかかる分野での企業が促進されました。 ■人材と技術:製造業と海外からベンチャーへ 「高い教育水準、技術力の高さ、優れたチームワーク」、これは台湾人材が世界で競争力を持つポイントです。つまり、人材は台湾ベンチャーにとっては最大のストロングポイントといってもいいでしょう。
国際経営開発研究所(IMD)のデジタル競争力ランキングによると、台湾は3位(人口2000万人以上の国と地域に限ったケース、2000万人以下を含めると9位)につけています。テック人材に関する評価を見ても、「人口当たりの研究開発者数」は1位、「研究開発の公的支出」「高等教育の成果」で3位、「PISA調査:数学的リテラシー」で4位、「大学卒業生に占める理系比率」で7位といくつかの項目で世界トップクラスと評価されています。人口規模以上にテック人材が豊富であることが台湾の強みなのです。