「むずむず脚症候群」の治し方・治療を医師が解説 セルフチェックや病院での検査方法も
むずむず脚症候群の診断・治療は何科を受診したらいい? 病院での検査や治療、お薬についても知りたい
編集部: 症状が見られたら何科を受診したら良いのですか? 栁原先生: 日本睡眠学会認定睡眠専門医のいる医療機関を受診することをお勧めします。 大学病院や総合病院以外にも、睡眠外来を行っている心療内科や精神科のクリニックや神経内科でも診療を行っている場合があります。睡眠専門医の在籍するクリニックについては、日本睡眠学会のHP(※)を参照してください。 ※日本睡眠学会のHP https://jssr.jp/list 編集部: どのような検査を行うのですか? 栁原先生: まず症状の具体的な内容のほか、既往歴や現在の使用薬、嗜好品などについて細かく問診で確認します。原因として鉄不足を疑う場合には、血液検査を行って血清フェリチン値を調べます。 また必要に応じて、夜間の覚醒中に安静を保った状態で症状の重篤度を評価する「不動指示検査(SIT)」や、むずむず脚症候群の患者さんの約80%に合併するといわれている「周期性四肢運動障害」の鑑別のため「終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)」を行う場合もあります。 編集部: さまざまな検査を行う必要があるのですね。 栁原先生: これらの検査は診断に必須ではありませんが、治療方法を決めるために必要な場合がありますので主治医としっかり相談をして決めましょう。 編集部: どのようにして治療するのですか? 栁原先生: 先ほどむずむず脚症候群には、続発性のものと原発性(特発性)のものがあることをお話ししましたが、続発性のむずむず脚症候群の場合には、可能であれば原因の解決を行い、むずむず脚症候群の症状の軽減を図ります。 例えば、鉄欠乏が原因のむずむず脚症候群の場合には鉄剤の投与によって症状が改善します。薬剤によるむずむず脚症候群の場合には、原因となっている薬剤を中止することにより症状が改善します。 編集部: 原因の解決が難しい場合はどうするのですか? 栁原先生: 原因の解決が難しい場合、もしくは特発性のむずむず脚症候群の場合には、症状を和らげる「対症療法」を行います。 医師の行う対症療法は薬物療法が主体となりますが、カフェインやアルコールの摂取を控える、禁煙する、ぬるめのお風呂に入る、就寝前にストレッチ体操をする、足裏マッサージをするといった非薬物療法も役立ちます。 編集部: むずむず脚症候群の治療にはどんな薬を用いるのですか? 栁原先生: 対症療法に用いる薬剤としては、保険適用されているドーパミン受容体作動薬と抗てんかん薬をもとに開発されたガバペンチンエナカルビルという治療薬のほか、有効な薬剤が数種類あります。 治療の第一選択になる場合も多いドーパミン受容体作動薬は用量に注意が必要で、長期間の使用により「逆転現象 (オーグメンテーション)」といって、これまで有効だった薬が効かなくなり、症状が増悪(違和感が強くなる、症状を生じる時間や頻度が増える、今まで症状のなかった部位へ症状が広がる)する現象を生じる場合があります。 編集部: 定期的に診察を受け、調整する必要があるのですね。 栁原先生: むずむず脚症候群の症状には増悪や軽減などの波がありますので、症状に合わせて用量を変更し、できるだけ少ない用量で症状をコントロールするなど、用量や使用期間に注意しながら逆転現象を起こさないよう長期的な治療計画を立てることが大切になります。 編集部: 鉄欠乏も原因の一つということですが、脚がムズムズして落ち着かないときは、鉄分を補充した方が良いのでしょうか? 栁原先生: すでに鉄が十分に足りている場合には、鉄剤や鉄のサプリメントで鉄を補充しても、むずむず脚症候群の症状の改善は期待できません。むずむず脚症候群の鉄不足は、健康診断などでよく測定される「血清鉄」ではなく、「フェリチン(貯蔵鉄)」の値で判断します。 編集部: 自分ではなかなか判断できないということですか? 栁原先生: 鉄不足によるむずむず脚症候群はフェリチンの値が検査結果に表示されている正常範囲内でも生じます。さらに、このフェリチン値を増加させるのに、経口で鉄剤を使用した場合でも、通常では数か月を要します。 このような理由から、むずむず脚症候群を疑う症状のある場合には自己判断で鉄のサプリメントを摂りながら経過をみるのではなく、症状がつらい場合には気軽に睡眠外来などへ相談をいただければと思います。 編集部: 最後に、Medical DOC読者へのメッセージがあれば。 栁原先生: むずむず脚症候群は対症療法により90%近い患者さんに症状の改善がみられる睡眠障害です。 疾患自体がまだ広く知られていないこと、病名に脚がつくことから「脚」に症状がないと受診や相談をためらってしまう場合があること、むずむず脚症候群を疑っていても何科を受診していいのかわからず治療や症状の改善の機会を失ってしまうケースも見受けられます。 幼少期から症状があった方の中には「寝るときにはほかの人もムズムズしているのだと思っていた」と言う方もいます。 むずむず脚症候群は改善の方法がある疾患ですので、身近な方が夜寝苦しそうに落ち着かない様子がある場合には、「むずむず脚症候群」のことを思い出して、睡眠外来の受診をお勧めしていただければと思います。