「牛乳は10年で3割値上げ」「1000円超えのケーキ」なぜ乳製品の高騰は止まらない…?日本の酪農家が直面する「過酷な現実」
「酪農」と聞いてみなさんが思い浮かべるのは何だろうか。高原の牧場でのんびりと美味しそうに草を食む牛の姿、はたまた牧草ロールが転がる北海道の草原を思い描く人もいるかもしれない。 【マンガ】「日本人はヤバい」オーストラリア人が「日本のうなぎ」を食べた「衝撃」 近年、牛乳やバターなどの乳製品が値上がりし続けている。スーパーで値札を見て、「いつの間にこんなに高くなったのか」と目を丸くした人も多いだろう。日本で販売されている牛乳の平均価格は、2014年1月には194円(1000mlあたり)だったのが2024年1月には252円と、この10年で約30%も上昇した。 なぜ、“物価の優等生”ともいわれた牛乳がこんなに高騰しているのか? 日本の酪農家はいまどんな状況に置かれているのか? その背景を探るべく、15年以上にわたって酪農の現場を訪ね歩いてきた研究者であり、入門書『酪農家になりたい君へ 牛乳から世界がかわる』の著者、北海道大学大学院農学研究院で地域連携経済学を専攻する小林国之准教授に話を聞いた。
酪農は「遠い世界」の仕事じゃない
「この本を書いたきっかけは、牛乳や乳製品が私たちにとって非常に身近な存在であるにもかかわらず、酪農が一般社会と隔絶した場所で、苦労して従事する仕事のように受け止められていると感じていたからです。決してそうではなく、仕事と生活を一緒に楽しみ、魅力的な人生を送っている酪農家がたくさんいらっしゃる。職業の選択肢の一つとして、すべての人に開かれていることを伝えたかったのです」 小林氏がそう言うように、縁遠い存在に感じるが、酪農は世界中のほとんどすべての地域で営まれてきた普遍的な農業形態である。直接食べることができない草を、牛を通じて乳や肉に変えてもらうことによって、ヒトは重要な栄養素であるタンパク質や脂肪を得てきた。 「酪農は世界各地で行われているため、地理や気候条件によって国ごとに大きな特色があります。たとえばアイルランドやニュージーランドでは、放牧を中心とした低コストな飼育法が発展してきました。ヨーロッパ最大の農業国フランスでは、牛のエサとなる穀物やデントコーンを栽培して大規模な農業経営を行う一方、山岳地帯では固有の品種の乳牛を夏に放牧するなど、地域の食文化と結びついた手法が用いられています。 現在の日本の酪農は、主にアメリカやデンマークのやり方を参考にしてきました。特に、北海道酪農の手本となったデンマークは、湿地の多い土地を改良して草地を作り上げ、新たに牧草地を作った。 さらに穀物や畑作物などの多様な飼料を自給することで、乳量を上げてきました。世界最大の酪農大国アメリカも、広い国土に合わせて地域ごとのスタイルを確立していますが、最も盛んなカリフォルニア州では大資本と機械化による企業的農業が特徴ですね」
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