朝ドラ『虎に翼』を見てるならこれもぜひ! 働く女性をめぐる必見ドラマ
NHK連続テレビ小説『虎に翼』が話題沸騰中! 日本で初めて女性として弁護士、裁判官、裁判所長とキャリアを重ねた三淵嘉子さんをモデルにしたオリジナルストーリー。主演の伊藤沙莉の熱演も含めて、女性であることで数々の困難、理不尽な現実に直面する姿に「私も同じ思いをした」と共感する視聴者が続出しています。ドラマを観ながら約100年以上の時を経て変わったことと、今だに変わらない現実に思いを馳せる人も多いのでは? 【写真】働く女性をめぐる必見映画&ドラマ7選 そこで『虎に翼』のテーマに直結するドキュメンタリーから多角的な視点で働く女性を描いたフィクションまで、朝ドラで描かれている時代や女性の社会進出について、より広い視野から日本の事情を俯瞰し、考えを深めることができる必見の映画・ドラマをご紹介します! 今回は海外ドラマ『ミセス・アメリカ~時代に挑んだ女たち~』をピックアップ!
海外ドラマ『ミセス・アメリカ~時代に挑んだ女たち~』
■フェミニズム運動において、女性の連帯をはばむものとは? 近年、多様性という言葉が急速に一般に浸透しているが、それは当然「女性」に対しても言えること。人種やジェンダー、セクシュアリティなどをラベリングすることに問題があるように、「女性」とひとくくりして語ることにも無理がある。経済的状況や家庭環境、結婚か未婚か、仕事をしているのか専業主婦なのか、子供のあるなしなどさまざまな要因によって、考え方はかなり違ったものになるはず。 そのような多様な女性たちが、男女平等についてどう考えるのか。そのことをわかりやすく知ることができる本作は、アメリカの合衆国憲法に男女平等を明記するERA(Equal Rights Amendment/男女平等憲法修正条項)の議会通過を目指すフェミニズム運動における賛成派と反対派の熾烈な闘いを描く。 芯のあるフェミニストとして知られる主演のケイト・ブランシェットが演じるのは、実在した人物フィリス・シュラフリー。保守派として有名で、晩年は極右サイトに寄稿したり、ドナルド・トランプ支持者としても知られた人物で、1970年当時は主婦たちを巻き込んで反ERA活動を強力に進めて成果をあげた。 しかし、本作が真に優れているのはシュラフリーもまた矛盾した複雑な面を持つ人物であったこと、さらにアンサンブルドラマとして、実在するERA賛成派のフェミニストのアイコン、グロリア・スタイネム(ローズ・バーン)やシャーリー・チザム(ウゾ・アドゥーバ)らもまた、先に述べたように一枚岩ではなく考え方は多様であることを描いている点だ。 そもそも論として、シュラフリーは自らも「女性の幸せ」として、また守られるべき権利としての「専業主婦」であるとしながら、貪欲な上昇志向を持つ「職業婦人」であるという大いなる矛盾を最初から抱えていた。一方で、「女性の幸せ」をめぐる議論はフェミニストたちの間でも大きく対立してきたテーマだ。加えて劇中では、双方の支持者たちの中にもシュラフリー、スタイネムらのそれぞれの主張、考え方に疑問や反発を抱く一般女性の姿も描かれる。 このように議論が紛糾する状況を巧みに利用したのがシュラフリーだ。フェミニストたちの矛盾をついて分断をあおる狡猾さには、フェミニズム運動の敵を知る意味でも学ぶところも多い。しかし、忘れてはいけないのは、その背景にある男性が作り上げた社会の構造的な問題だ。個々の女性たちが互いの意見の相違を尊重し、団結することのそもそもの難しさを認識した上で、女性を分断させるものは何かについて、今一度考えてみたい。 ●ライター 今祥枝/Sachie Ima 『BAILA』『日経エンタテインメント!』『クーリエ・ジャポン』などで、映画・ドラマのレビューやコラムを執筆。米ゴールデン・グローブ賞国際投票者。著書に『海外ドラマ10年史』(日経BP)。
『ミセス・アメリカ~時代に挑んだ女たち~』 ディズニープラスのスターで配信中 企画・制作:ダーヴィ・ウォーラー 出演:ケイト・ブランシェット、ローズ・バーン、サラ・ポールソン、マーゴ・マーティンデイル、ウゾ・アドゥーバ、エリザベス・バンクスほか © 2024 FX Productions, LLC. All rights reserved. 全9話