センバツ2021 初出場の東播磨 「また甲子園で試合がしたい」 精度上げ夏に完成形を /兵庫
センバツの大会第3日に21世紀枠で初出場した東播磨は、明豊(大分)に延長十一回9―10のサヨナラで惜敗した。試合2日後、「甲子園は楽しかった」と話す選手たちの表情は晴れやかだったが、目は夏を見据えていた。担当記者が感じた、東播磨の春を振り返る。【後藤奈緒】 福村順一監督(48)ら野球部スタッフから聞いた選手たちの印象は「真面目で素直」。約2カ月間、グラウンドで見ているとその通りだった。練習で息を切らしていても道具の準備は全員が駆け足で取り組み、あいさつはいつも元気いっぱい。文武両道の高校生活を求める選手が多く、半数弱は練習後に塾に通っているそうだ。 チームが武器とする機動力野球は、内野ゴロの間に三塁走者が一気に本塁を狙う「ゴロ・ゴー」が象徴的だ。今大会の九回でも見せた。チーム平均で身長170・5センチ、体重65・5キロの選手たちは簡単に長打が打てない代わりに、盗塁や小技を効果的に使う。原正宗主将(3年)は「理想的なプレー。打っていないのにいつの間にか点を取っているって面白くないですか」と笑顔で話してくれた。 守備を鍛えるのは福村監督の「決め打ち」と呼ばれる高速ノック。3~5分1セットで、投内連携の練習も同時にするため、初めて見た時は目まぐるしくて驚いた。レギュラー陣でも強い打球を捕球できないことがあり、何度も「お願いします」と監督にノックを要求。その間、他の選手は声援を送り、全員で課題克服に努めていると感じた。 21世紀枠の選出理由の一つになった、SNS(ネット交流サービス)の活用は続いていた。大会直前も新しいアプリを導入。宿舎生活中も選手が個人的に監督に質問できるようになっていた。実は機械操作が苦手という福村監督に代わって初期設定したのは小嶋純平・学生コーチ(3年)。細やかに選手を支え、試合前日は恒例の新作ギャグを披露しチームを和ませた。 雨天順延のため1日遅れて迎えた22日の試合は、ベンチメンバー18人中、控えの投手をのぞく16人が打席に立つ総力戦になった。「ベンチからは今までで一番声が出ていた」と記録員の加古春菜マネジャー(3年)。 八回、明豊打線の大飛球を走りながら捕球し、攻撃面でも3得点に絡んだ島津知貴選手(3年)は「自分のプレーができた。100点満点中85点」と自己評価する。九回に二塁打を放ち同点に貢献した高山隼選手(2年)も「80点」という。12四死球と9安打で攻守ともに最後まで諦めない姿勢を崩さず、チームは全力を出し切った。 三塁側の東播磨のアルプススタンドも盛り上がった。駆けつけた約900人の応援団は回を追うごとに高まる勝利への期待感に、一体感を増していった。 エースの鈴木悠仁投手(3年)は甲子園を「(六回の)再登板から九回までは思い通りの投球ができたが、(他の回は)試合を作れなかった」と立ち上がりに課題を残した。「もう負けない。負けたくない」と悔しさをにじませる。原主将は「甲子園期間中は野球だけに集中できて本当に楽しかった。当たり前のプレーの精度を上げ、夏に完成させたい。また甲子園で試合がしたい」と目を輝かせた。 チームは25日、練習を再開した。取材は一旦終わるが、夏に東播磨が目指す完成形を見せてくれるのを楽しみにしている。 〔神戸版〕