カーナビでも辿り着かない! 絶滅危惧メシ「アリランラーメン」に感じる“罪と愛”
名店も数多く集結し、“ラーメン王国”とも呼ばれる千葉県には、「勝浦タンタンメン」「竹岡式ラーメン」「アリランラーメン」という独自の発展を遂げた三大ラーメンと呼ばれるご当地メシが存在している。 そのラーメンは…… 勝浦タンタンメン 元々、漁業が盛んな勝浦市の漁師が海で冷えた体を温めるために食べたといわれる担担麺。醤油ベースのスープに、ラー油をたっぷり入れた真っ赤なビジュアルが特徴だ。「元祖 勝浦式担担麺 江ざわ」が1954(昭和29)年に提供したのが始まりとされ、市内で約40店舗で提供されている。 竹岡式ラーメン 富津市の竹岡漁港発祥のご当地ラーメン。一般的なラーメンと異なり、スープを使わずにチャーシューを煮込んだ醤油ダレに麺を茹でたお湯を入れる作り方。また、生麺ではなく乾麺を使用し、炭火の七輪で茹でている。 夏の猛烈な暑さで体もへばりつつある日、千葉三大ラーメンの中で一番中毒性が高い(はず)「アリランラーメン」を食べてスタミナをつけようという欲望のもと、ラーメン一杯を食べるためだけに東京から千葉の房総半島へ車を走らせた。 実は「アリランラーメン」発祥の「八平(はちべえ)の食堂本店」は、その店の場所がわかりづらく、公共機関はおろか、カーナビも反応してくれない“秘境のラーメン店”としても知られているのだ。 東京からアクアライン経由で、首都圏中央連絡自動車道「茂原長柄スマートIC」を降りて茂原街道を走ること約1時間30分。街道沿いに立つ赤いノボリを目印に、平屋の古民家風な「八平の食堂本店」が突如出現する。 開店11時に時間を合わせて来たのだが、すでに駐車場は車とツーリングのバイクがぎっしり停まって満車状態だった。 他にはない味を追い求め続けて完成したアリランラーメン 1972(昭和47)年創業の「八平の食堂本店」。店主の古市 豊さんが当時屋台を引いて営業していたときに、お客から「他では食べられない個性的なラーメンを作ってほしい」というリクエストをもらい、5年間の試行錯誤の末に「アリランラーメン」を完成させた。 「アリランラーメン」は、たっぷりのタマネギと豚肉の甘味が溶け込んだ醤油味のスープに、ニンニク、ニラ、ネギを加え、自家製ラー油とすりおろしニンニクがさらにコクをプラスしたピリ辛ラーメン。その名前は商標登録にもなっている。 “アリラン”の由来は、その昔に朝鮮半島に存在した伝説の峠「アリラン峠」が由来。「八平の食堂本店」も峠に位置しており、「昔の峠越えは非常に困難で、途中で元気をチャージしなければ越えられなかったはず」との考えから、スタミナ満点のラーメンを開発し、命名したという。