発熱も怪我も怖い…にしおかすみこ、認知症で糖尿病の母とダウン症の姉と薬の話
かかりつけの病院
母のかかりつけの病院に、初めて一緒に訪れたときのことだ。 と言っても、すんなり行けたわけではない。当時、認知症についての知識がほぼなかった私は、理不尽な母の言動にイチイチ腹を立て、喧嘩ばかりしロクな会話もできていなかった。けれど母が糖尿で内科に通っているらしいという微々たる把握はしていた。 ただ、そこが訪問診療、介護等も請け負い、施設も併設していることは知らなかった。 それ故に、「腹かっさばいて死んでやらあ!」と荒れる母をネットで調べただけの精神科に必死で連れて行った。アルツハイマー型認知症の初期と診断された母は、益々、激昂し、私に不信感を募らせたようだった。 「よくもあんな藪医者に会わせたね!すみの世話にはならない!ママは自分が信用できる先生を見つけてる!そこに老人ホームもある!お姉ちゃんを看取ったら、その後は勝手にそこに入るから!二度とママに口出しするんじゃないよ!」 母の言うかかりつけの病院をスマホでググってみる。見れば見るほど……まずこちらだったのでは?と思えてならない。 認知症の検査をしてくださった精神科医の先生はとても良かった。親切丁寧で、勿論、藪医者などとんでもない。それとは別にだ。あのひと騒動いる?もっと早く知っていれば、母をそこまで傷つけずに済んだのではないか。私は徒労と疲労で頭がグルグルする中で、そのホームページの画面に施設の頭金が300万円を超えるという情報を見つけ衝撃が走る。ゲッ、どんなにそこに入りたかったとしても、ウチにはそんな金、どこにもない。
インスリン注射が残り少なくなって
そして母の手持ちのインスリン注射が残り少なくなったタイミングで、無理やり病院に同行した。看護師の方々や先生に、私はこのギスギスした親子関係を若干隠しながら、「初めまして、母がお世話になっております」とご挨拶すると、すかさず母が横から「娘です。急に帰って来てボケ扱いされて困っております」と添えた。 まず処置室で優しげな看護師さんに、母が血糖値を計っていただきながら、緩やかな顔で談笑する様子と、400を超える数値にビビる。 続いて診察室。改めて、イケメン先生だ。私よりは年上だと思うがお若く見える。 母が丸椅子に座り診ていただいているのを横目に、手短にこれまでの経緯を説明し、無知な私は聞いた。 「認知症を遅らせる薬があるって聞いたんですけど、こちらで処方してもらえますか?」 私が母の前で《認知症》という言葉を発したのは、ここ3年で、これ1回だと思う。 薬にすがりたい気持ちと。何で私ばっかり。ババア、少し自覚して、少し傷ついてしまえ!という意地悪な気持ちがあった。 ◇にしおかさんが3年で1階だけ母親の前で口にした「認知症」という言葉。認知症に効果のある薬があればほしい人は少なくないだろう。では医師の回答は。 後編「認知症で糖尿病の母と暮らすにしおかすみこが医師に聞いた「薬」の話」にて詳しくお伝えする。
にしおか すみこ(お笑いタレント)