全英が泣いたテレビ番組場面も再現「前向きなメッセージを受け取って」 ジェームズ・ホーズ監督「ONE LIFE」
「イギリスのシンドラー」とも言われるニコラス・ウィントンの実話を映画化した「ONE LIFE 奇跡が繋いだ6000の命」。プラハからユダヤ人の子供669人を列車に乗せてイギリスに逃し、50年後に彼らやその子孫たちと再会する。ジェームズ・ホーズ監督は「今の世界に通じるヒューマンな物語であり、大きな救いや希望のメッセージにあふれている」と語った。 【動画】〝救えなかった命〟の後悔を抱えてきた男に50年後に訪れた奇跡「ONE LIFE 奇跡が繋いだ6000の命」予告編
ユダヤ人の子供たちをイギリスへ
第二次世界大戦直前の1938年、ナチスがオーストリアとチェコのズデーテン地方を占領した。迫害を恐れたユダヤ人はプラハに逃れたが、住まいも食料も窮乏する生活を送っていた。イギリスで株の仲買人をしていた青年ニコラスは、何かしなくてはという思いに駆られプラハに向かう。子供たちだけでもイギリスに避難させようと、同志たちと資金集めと里親探しに奔走する。それから50年。ニコラスは救出できなかった子供たちが忘れられず自分を責め続けていた。そんなニコラスにBBCの人気番組「ザッツ・ライフ!」で紹介したいと連絡が入る。 日本では、今作でニコラスの物語を知った人も少なくないだろう。チェコやイギリスではどう受け取られているか聞いた。チェコでは史実として学校で教えられているほど浸透していて、本作の撮影でも「ニコラスの映画を撮るので『(ロケ地として)使わせてほしい』とお願いすると、『ぜひ使って』という返事がきた」ほどだった。 イギリスでも、映画の中で再現された「ザッツ・ライフ!」の場面は有名だという。ニコラスをゲストに迎え、司会者が客席に「彼に救われた方はいますか」と問い掛けると、全員が立ち上がる。「あの場面を記憶している人はたくさんいるし、よく知られている」
映画化の条件は「アンソニー・ホプキンス主演で」
原作はニコラスの娘、バーバラ・ウィントンの著作だが、映画化の申し出に対し条件があった。「父を演じられるのはアンソニー・ホプキンスさんしかいない」。かなりハードルの高いことだったがなんとかクリアできた。バーバラは「個人ではなく、チームで成し遂げたことをしっかり描いてほしい」と求めたという。ニコラスも個人の業績とは思っていなかったからだ。こちらも「その願いは表現できたと思っている」と満足そうだった。 バーバラは撮影の準備期間中は存命で、ホーズ監督、娘を演じた俳優、ニコラスの母を演じたヘレナ・ボナム=カーターらとも話をすることはできたという。死後はバーバラの夫や家族の協力を得て製作した。